第1回音楽知覚認知国際会議(1st ICMPC)について (大串健吾先生による解説)

1st ICMPCについて

このページは、第1回音楽知覚認知国際会議(The First International Conference on Music Perception and Cognition: 1st ICMPC )について、開催の経緯や開催内容等を掲載しています。本ページの文章は大串健吾先生に作成いただきました。(ページ作成 2011年5月)

1.日本開催に至る経緯

 音楽の知覚・認知に関する研究は1980年代になって世界的に急速な発展を見せてきた。ヨーロッパにおいては単発的にこの関連分野の 国際会議が行われていたが、アメリカでは2-3年に一度開催される継続的な国際会議を発足させたいとの意向があり、1986年に E.Carterette(UCLA), D.Deutsch(UCSD), W.Dowling(Texas Univ. Dallas)の各教授らから日本側で第1回国際会議を開催してほしいと要請してきた。日本側で検討を行った結果、主催機関として日本音楽知覚認知研究会 を創立し、1989年秋に京都で第1回の会議を開催することに決定した。

2.開催の準備体制

  • 主催: 日本音楽知覚認知研究会
  • 後援: 日本音楽心理学会、日本音響学会、日本音楽学会、日本認知科学会
  • 委員等:
    President:
    梅本堯夫(甲南女子大学)
    Co-President:
    Edward Carterette (USA)
    Chair Person of Organizing Committee:
    大串健吾(京都市立芸術大学)
    Co-Chairperson of Organizing Committee:
    Diana Deutsch(UCLA)
    Chair Person of Program Committee:
    難波精一郎(大阪大学)
    Secretary of Program Committee:
    桑野園子(大阪大学)
    Members of Organizing Committee:
    小谷津孝明(慶應義塾大学)、寺西立年(九州芸術工科大学)、波多野誼余夫(独協大学)、
    井口征士(大阪大学)、佐藤允彦(相愛大学)
    Advisory Board:
    W.J.Dowling (USA), L.B.Meyer (USA), J.R.Pierce (USA),
    R.Plomp (The Netherlands), J.C.Risset (France), M.R.Schroeder (Germany),
    J.A.Sloboda (UK), J.Sundberg (Sweden), E. Terhardt (Germany),
    W.D.Ward (USA), K.Asai (Japan), T.Oyama (Japan), O.Kitamura (Japan),
    H.Sakurabayashi (Japan)
    委員:
    苧阪満里子(大阪外語大学): 晩餐会、歓迎レセプション
    菅 千索(和歌山大学): 海外参加者の宿泊手配、歓迎レセプション
    津崎 実(ATR): 受付関係
    井口征士(大阪大学): 展示総括
    小林範子(ATR):  演奏会司会
    村尾忠廣(愛知教育大学): 晩餐会司会
    森下修次(京都市立芸術大学): 事務局担当
    松田栄子・西村千津子(京都市立芸術大学): 演奏会手配・舞台セッティング
    中山一郎(大阪大学)、宮崎謙一(新潟大学): その他
    Proceedings 日本語版アブストラクト翻訳者
    安藤ハル(東京大学)、岩宮真一郎(九州芸術工科大学)、上田和夫(京都大学)、
    大浦容子(新潟大学)、小坂直敏(NTT)、柏野牧夫(NTT)、越川房子(早稲田大学)、
    小林範子(ATR)、佐々木隆之(宮城学院女子大学)、重野 純(北里大学)、菅 千索(和歌山大学)、
    菅 真佐子(滋賀大学)、谷口高士(京都大学)、津崎 実(ATR)、中島祥好(九州芸術工科大学)、
    中山一郎(大阪大学)、羽藤 律(京都市立芸術大学)、平賀 譲(図書館情報大学)、
    平松幸三(京都大学)、古矢千雪(広島文化女子短期大学)、星野悦子(上野学園大学)、
    三雲真理子(甲南女子大学)、宮崎謙一(新潟大学)、山田真司(大阪芸術大学)
    事務局:
    京都市立芸大音楽学部 大串研究室

3.概要

  • 日時: 1989年10月17日~19日
  • 場所: 京都エミナース(京都市西京区)
  • 発表件数: 93件(日本53件、海外 40件)
  • 参加者: 202人(12か国)
  • 参加者内訳: USA 22, UK 5, France 3, Australia, Canada, Sweden 各2,
      Germany, Israel, Netherlands, Norway, Poland 各1、日本 161
  • 開会式
    開会挨拶: 梅本堯夫、Carterette、Deutsch
    基調講演: 梅本堯夫
    コンピュータ音楽演奏と講演: 湯浅譲二(UCSD)
    ライブ演奏とコンピュータ演奏の競演: J.Tro (Norway)
  • 研究発表内容
    音楽の演奏、コンサートホールの音響、音楽処理のコンピュータシミュレーション、
    音調性とオクターブ類似性、調性および非調性音楽の構造、音楽の創造性と分化的要因、
    音楽の認知と発達、リズムとテンポ、音楽処理に関する脳の機能、音楽的活動の生理学的対応、
    音楽におけるグルーピングと注意のメカニズム、音楽の理解と記憶、
    楽器音の音色と歌声の知覚、音楽に対する情緒的反応、音高と和声の知覚
  • 展示
    音楽演奏システムMUSE(甲南大学)
    音楽コンピュータC1(ヤマハ)
    サウンドエディットシステム(コルグ)
    MIDIシステムの実演(河合楽器)
    自動作曲システムMAGIC(カシオ計算機)
    ミュージくん/ミュージ郎(ローランド)
    ボーカルトレーナー(松下電器)
    音楽制作ソフトEUPHONY(富士通)
    楽譜版下作成システム(大日本印刷)
    自動演奏琴(湖南異業種フォーラム)
  • 社交行事
    16日 17-19時 歓迎レセプション:
     京都エミナースの会議室の一つで、無料のWelcoming Partyが開催され、多数の参加者が出席した。
    17日 19-20時 狂言と演奏会:
     日本の音楽の演奏会が開催され、着物姿の小林範子氏(ATR)の司会で、安東伸元氏等による狂言「棒縛り」が演 じられ、安藤政輝氏(東京芸大)の琴、志村哲氏(大阪芸大)の尺八の演奏および三井ツヤ子氏(京都市立芸大)の日本の歌の演奏があり、とくに海外からの参 加者に人気を呼んだ。
    18日 18-20:30  晩餐会:
     140人が参加した。村尾教授(愛知教育大)のユーモアに富んだ司会で始まり、梅本教授、Carterette 教授の挨拶、大串教授、Deutsch教授および岩淵龍太郎教授(京都市立芸大音楽学部長)の鏡割り、難波教授の乾杯の音頭の後、千住真理子さんのヴァイ オリン、阿部裕之氏(京都市立芸大専任講師)のピアノ伴奏で、クライスラーの小品を3曲、Frances教授(パリ大学)のフルート、星野悦子氏(上野学 園大)のピアノ伴奏で、Frances教授の自作の曲の演奏、京都市立芸大大学院学生の小林克人、毛利智恵両氏によるパパゲーノとパパゲーナの二重唱と狂 言の小舞などが披露され、大いに盛り上がった。宴も終わりに近くなって、司会者から各自席を立ってよいという指示があり、参加者は他の人々と自由な交歓を 楽しんだ。最後は日本流に司会者の手締めで晩餐会を締めくくった。
     外国からの同伴者のために京都市内観光を実施した。金閣寺、二条城、平安神宮、嵐山、池坊会館などを難波夫人達が案内役を務めた。