平成22年度春季研究発表会 プログラム詳細版

2010年 5月29日(土)~ 5月30日(日)
於: はこだて未来大学  (世話役: 中田 隆行 先生)
■ 講演時間:一般講演20分(発表15分+質疑応答3分+入れ替え2分)
■ ◎印は研究選奨受賞の有資格者を表す。
5月29日(土)
11:30~13:00 理事会
13:00~13:05 開会あいさつ
セッション1 13:05~14:20
[1] 13:05~13:25 日常的な話しかけと歌いかけの文脈における乳児 の発声の特徴:事例研究 ○安達真由美(北海道大学大学院・文学研究科),安藤太一(北海道大学文学部) 自発的ソングの発達では,音楽的相互行為という文脈の方が他の日常的な文脈 よりも,乳児は音楽的喃 語 を発すると言われている.本研究では,この知見が,果たして物理的に観察可能な現象なのか,それとも,乳児の音声特徴を聴いた人の解釈によるものなのかについて,検討した.
[2] 13:25~13:45 日本人と中国人のリズム再生の違い ○智凡蘇(新潟大学大学院・教育学研究科),森下修次(新潟大学・教育学部) 日本の音楽(佐渡おけさ等)と中国の音楽を刺激として選び,曲中から選んだ10秒程度のリズムおよびフレーズを日本人と中国人の被験者に聴かせ,その後リズムを再生してもらった.非常に興味深い結果が得られた.
[3] 13:45~14:05 大学生の中国ポップの歌唱模倣力について ◎仙田真帆(鳥取大学大学院研究生),小川容子(鳥取大学・地域学部) 本研究は,大学生の歌唱模倣力を測定するために実施した歌唱実験の第一段階として報告するもので ある.大学生(非音楽専攻生)が,中国ポップ曲をそれらしく歌うために,歌のどの部分に,どのように注目し,どのように模倣するのか,彼らの「聞く⇔歌 う」という試行錯誤の過程を明らかにした.
[4] 14:05~14:25 リズムパターンの印象に及ぼすテンポとスウィング比の影響 ◎池上真平(青山学院大学大学院・教育人間科学研究科),重野純(青山学院大学・教育人間科学部) 2種類のリズムパターンを用いて,リズムの構造的側面であるテンポとスウィング比がリズムパターンの印象に及ぼす影響について調べた.その結果,テンポもスウィング比も,リズムパターンの印象に少なからぬ影響を及ぼすことが示唆された.
[5] 14:25~14:45 口頭で生成されたリズムのタイミング ○佐々木隆之(宮城学院女子大学) 音楽科の学生によって口頭で生成されたリズム(tatata,tata)について,時間間隔等のタイミングを測定した.結果は,楽器によるリズム生成の結果と比較する.また,時間縮小錯覚との関連で考察する.
14:45~15:05 休憩
セッション2 15:05~16:45
[6] 15:05~15:25 人工内耳装用児と健聴児の抑揚の知覚と表出 ○中田隆行(公立はこだて未来大学システム情報科学部),Sandra E. Trehub(University of Toronto, Department of Psychology),神田幸彦(長崎大学医学部) 人工内耳装用児と健聴児の抑揚知覚と表出について検証した.人工内耳装用児の抑揚知覚の成績は健聴児より有意に低かったが,人工内耳装用児の抑揚表出の得点を装用年齢を基準に同年齢の健聴児の得点と比較した結果,有意な差が無いことが明らかになった.
[7] 15:25~15:45 単純なリズムの知覚に音の長さが及ぼす影響 ◎蓮尾絵美 (九州大学大学院・芸術工学府),中島祥好(九州大学大学院・芸術工学研究院),廣瀬有希子(九州大学大学院・芸術工学府) 本研究では,3つの音で構成された二つの隣接する時間間隔という非常に単純なリズムパターンを用い,3つの音の長さをそれぞれ変化させると,二つの時間間隔の知覚的な長さがどのように変化するかを調べた.
[8] 15:45~16:05 時間縮小錯覚を説明する時間間隔知覚のベイズモデル ◎澤井賢一 (東京大学・大学院情報理工学系研究科),佐藤好幸 (電気通信大学・大学院情報システム学研究科),合原一幸 (東京大学・生産技術研究所, 東京大学・大学院情報理工学系研究科) ベイズモデルは, 人が外界を観測するときに, ノイズの含まれた情報を経験的知識によって補正する様子を確率的に表す. 本発表では時間間隔の認知に対するベイズモデルを提案し, そのモデルが時間縮小錯覚を再現できることを示す.
[9] 16:05~16:25 演奏のリズムに及ぼす母語の影響 ○大串健吾(京都市立芸大名誉教授) 日本人の演奏は,しばしば西洋人の演奏とは異なると言われている. 実際に同一曲 の日本人と西洋人の演奏リズムを定量的に比較し,その違いが母語のリズムの違いにどのように影響されているかについて探求した.
[10] 16:25~16:45 有意味音の適意レベル-レベル変動音のラウドネス評価 ○難波精一郎(大阪大学名誉教授),加藤 徹(追手門学院大学心理学部),桑野園子(大阪大学名誉教授) 現実環境における意味を有する音はその大半がレベル変動音である.意味を受容する上で最適の聴取レベルすなわち適意レベル がいかなる要因で規定されるかを巡って,変動音のラウドネス評価を中心に検討する.
16:45~17:15 総会・表彰式(予定)
18:00~20:00 懇親会 レストランウイニング(0138-26-3111)
5月 30日(日)
セッション3 9:00~10:20
[11] 9:00~9:20 ピアノ専攻生の身体動作における楽曲様式の効果 ◎正田悠 (北海道大学大学院・文学研究科, 日本学術振興会特別研究員), 安達真由美 (北海道大学大学院・文学研究科) 正田・安達 (2009) は,プロのピアニストの身体が,Rachmaninoffの楽曲の音楽構造に従って変動することを示した.本研究では,ピアノ専攻の大学生を対象に,この身体動作の特徴がバロック,古典,ロマン,近現代の4様式で見られるかを調べた.
[12] 9:20~9:40 不均一性を持たせたトレモロ音のFluctuation Strength ◎安井 希子(龍谷大学大学院・理工学研究科),三浦 雅展(龍谷大学・理工 過去に提案された特徴強調方法に基づいて様々なトレモロ音を合成している.その後,Fluctuation Strengthの概念に基づいて算出した特徴量と波形から抽出した演奏の特徴量を用いて変動感を予測し,トレモロ音の変動感を適切に表わす変動量の算出方法を調査している.
[13] 9:40~10:00 採譜能力に関する人間と機械の比較 ◎水野有美子,柳田益造(同志社大学大学院・工学研究科) 採譜は,歌唱が正確でなければその正誤判定が難しいという問題がある. 以前,人間の歌唱に対する採譜の正確さを筆者らが開発したシステムと人間とで比較したが,今回は正解が既知の合成歌唱を対象にして比較する.
[14] 10:00~10:20 新しい筋電楽器のジェスチャ・表現の検討について ○長嶋洋一(静岡文化芸術大学 大学院デザイン研究科) これまで3世代の筋電楽器を開発してきたが,新しい第4世代の筋電楽器の研究開発に向けて,新しい筋電情報センシング手法とともに,手首から前腕で計測検出できる音楽表現のためのポーズ・ジェスチャーについて検討した.
10:20~10:35 休憩
セッション4 10:35~11:55
[15] 10:35~10:55 メロディのイメージに及ぼすハーモニーの影響 ◎ 橋本翠,宮谷真人(広島大学大学院・教育学研究科) メロディの音楽イメージに対する処理の指標となるERP成分としてiMMNが報告されている.ハーモニーの音楽イメージの付加によりiMMNが増大するかどうかについて検討した結果を報告する.
[16] 10:55~11:15 楽曲の印象評価は音楽によって誘導される気分を決めるのか? ◎牟田季純(早稲田大学大学院文学研究科), 越川房子(早稲田大学文学学術院) 単に「明るい曲」と楽曲を表現した場合,「明るい印象を受ける曲」(認知的側面)と「明るい気分になる曲」(情動的側面)という2通りの解釈ができる.この2つの側面について,気分誘導実験からの考察を行なった.
[17] 11:15~11:35 Bi-musicalな聞き手の異文化音楽処理とその神経基盤:MEG(Magnetoencephalography)を用いた検討 ◎松永理恵(北海道大学大学院文学研究科/北海道大学大学院保健科学研究院 ),横澤宏一(北海道大学大学院保健科学研究院), 関大輔(北海道大学大学院保健科学研究院),安保沙耶(北海道大学医学部保健学科), 阿部純一(北海道大学名誉教授) 現代の日本や韓国などで育った人は,その文化に固有の伝統的な音楽だけでなく,西洋音楽にも十分 に慣れ親しんでおり,両方の音楽を享受する“bi-musical”な耳をもっている.このことは,bi-musicalな聞き手が,性格の異なる2種類 の音階スキーマ(scale schema)を習得しており,それらの音階スキーマを使い分けていることを意味する.では,伝統音楽の聴取時と,西洋音楽の聴取時とでは,Bi- musicalな聞き手の脳内において,異なる神経基盤が関与しているのであろうか.本研究では,MEGを用いて,この疑問の解明に取り組む.
[18] 11:35~11:55 現代日本人のメロディ認知:メロディ再認課題を通して見た“バイミュージカリティ・モデル”の再考 ○星野 悦子(上野学園大学・音楽学部) 4音,5音,6音から成る西洋的メロディ,日本的メロディ,無調的メロディの直後再認実験を行 なった.4音条件では3つの音楽様式間に差はなかったが,5音条件では西洋的メロディと日本的メロディは無調的メロディよりも有意に高得点だった.しか し,6音条件では日本的メロディが他の2様式よりも有意に低い値を示し,現代日本人の「バイミュージカル」なメロディ認知能力は示されなかった.
11:55~12:40 休憩
セッション5 12:40~14:00
[19] 12:40~13:00 音楽演奏音の大きさに影響を及ぼす物理的要因について ○羽藤 律(桐朋学園芸術短期大学),加藤 徹(追手門学院大学),桑野 園子(大阪大学)、難波 精一郎(大阪大学) シンセサイザーを用いた音楽演奏音の大きさの心理的評価の実験を行うとともに,ダミーヘッドの外耳道入口で録音・測定した物理的特性との比較・考察を行うとともに,音の大きさを評価する総合的な指標について検討した.
[20] 13:00~13:20 ピアノによる短二度音程におけるsensory consonanceの測定Ⅲ ◎山本由紀子 (総合研究大学院大学 文化科学研究科 ),仁科 エミ(放送大学) middle Cから1octの間の,音高の異なる12種類の短二度音程を,刺激とした.「澄んだ/濁った」で,一 対比較で判断させ,協和度を測定した結果,音高が高くなるにつれて協和感も上昇するということが分かった.これまでの実験では,少ない被験者で沢山の試行 が行えるよう協和度が近い刺激音同士で比較を行っていたが,すべての刺激同士を比較した場合でも同様の結果が得られるか確かめる必要がある.そこで,これ までの実 験の音源を用い,再度実験を行った.その結果,これまでの手法に問題がないことが確かめられた.
[21] 13:20~13:40 和音文脈の調性感が和音認知に及ぼすプライミング効果の検討 ○吉野巌(北海道教育大学教育学部札幌校) 33名の大学生が,プライム和音系列(調性感高,調性感低,無調の3条件)に引き続いて提示されるターゲット和音に対する協和・不協和判断を行った.その結果,調性感の高い和音系列の時に反応時間が速くなるプライミング効果が認められた.
[22] 13:40~14:00 ステレオおよびサラウンド再生における音の評価と臨場感 ○谷口高士(大阪学院大学・情報学部),大出訓史,安藤彰男(NHK放送技術研究所) 10種類の音響コンテンツをステレオまたはサラウンド再生したものを対象に,音の特徴印象と,臨 場感,空間・時間的特性などに関する印象の評価実験をおこなった.抽出された因子に基づいて,各コンテンツの特徴を比較すると共に,両方式で再生した同一 コンテンツについて,どのような評価の違いが生じるかを直接比較し,音の臨場感をもたらすのに重要な要因について検討した.