学会発足の経緯

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このページは、日本音楽知覚認知学会発足の経緯について、難波精一郎先生に作成いただいた文章を掲載しています。(ページ作成 2011年5月)

日本音楽知覚認知学会発足の経緯

難波精一郎

 日本音楽知覚認知研究会は1988年3月25日の発足以後、順調に発展してきた。1994年6月、北海道大学で第13回例会が開催された時に、音楽知覚・認知研究会会長の故梅本堯夫先生より音楽知覚・認知研究の更なる発展を期するために将来計画を考える必要性を述べられた。その後、梅本先生を中心にその具体策の検討を進め、研究会形式ではなく学会としての組織を整え、会則の試案や査読論文を掲載する学会誌の発行目指すことなど一応の成案を得た。そこで、同年(平成6年)、11月12日、京都市立芸術大学で第14回例会開催の時、梅本会長が議長となって、研究会から学会への構想が提示され、梅本議長より初代会長候補者として大阪大学の難波精一郎が指名され、満場一致で一連の提案が承認された。引き続き、難波仮議長のもと、音楽知覚認知学会の設立総会が開催された。総会が最終的な決定権を持つ学会としての組織が満場一致承認され音楽知覚認知学会が同日発足した。梅本先生の的確なリーダーシップと、お互いの顔が見えるチームワークの良さが迅速で順調な学会の発足を支えた。常任委員・幹事を中心に運営してきた研究会の体制を理事会と名称を変更し、ほぼそのままのメンバーで引き継いだ。下表に学会発足時の理事会メンバーを示す。なお現在の「日本音楽知覚認知学会会則」の附則に、「1.日本音楽知覚・認知研究会の日本音楽知覚認知学会への名称変更および会則の改正は、平成6年度日本音楽知覚・認知研究会例会での承認を経て、平成6年11月12日より適用する。2.日本音楽知覚・認知研究会の資産、業務は日本音楽知覚認知学会が継承する」とあるが、本学会発足の経緯を示している。すなわち研究会が解散して学会が創設されたのではなく、名称の変更と会則の改正という形式を取っている。これは日本音楽知覚・認知研究会の和やかな雰囲気と活発な活動を尊重する会員の気持ちを反映したものといえよう。

 さて学会発足後、事務局はこれまで日本音楽知覚・認知研究会が長年大変お世話になった京都市立芸術大学大串研究室から大阪大学人間科学部環境心理学研究室へ移動した。事務局長・常任理事には同研究室の桑野園子助教授(翌平成8年教授)が就任した。桑野事務局長は当時日本音響学会の副会長を務め、これまで多くの国内学会、国際学会の運営に携わり、その力量が高く評価されていて事務局運営の中心となった。環境心理学講座には2名の研究補佐員が在籍し、いずれも学会事務には精通していて桑野事務局長を助けた。

 平成7年5月に九州芸術工科大学で開催された理事会において本学会の学会誌「音楽知覚認知研究」の発刊が決議され投稿規定も作成された。ただし編集委員会が組織されていなかったので、会長が編集委員長を代行し、理事全員が編集委員を兼務する形で発足した。編集業務の実務は山崎晃男、荒川恵子両幹事が当られ、事務局の機能をフル動員する態勢で創刊へ向けての作業を開始した。順調に原著論文が投稿され、また査読委員の方々の熱心で迅速な作業により、早くも同年12月に巻頭言、展望、原著論文6篇を含む充実した内容の創刊号が発行できた。なお予算が十分でなく、学会誌の印刷は事務局メンバーがボランティア活動として行い製本のみ業者に依頼した。このやり方だとかなり貧相な外観になるおそれがあったが、荒川幹事がプロのデザイナー、三宅郁美さんに知人のよしみで表紙デザインを依頼され、すっきりしたセンスの良いデザインの表紙が生まれた。おかげでほとんど手作りとは思えない機関紙が誕生した。この表紙デザインは現在の「音楽知覚認知研究」にも引き継がれている。翌平成8年12月に第2巻が出版され、展望および原著論文4篇の他、会員名簿も掲載された。また「音楽知覚認知研究」第2巻別冊として同年、モントリオールのマクギル大学で開催された「第4回音楽知覚認知国際会議」の要約集が大串副会長の編集で「会議報告」として発行され、機関誌年2回発行への端緒となった。

 なお、音楽知覚・認知研究会時代に毎年春と秋の2回例会が開催されてきたが、学会が組織された後も「研究発表会」と名をかえて同じく春と秋の2回開催され発表会資料が刊行されている。

表 音楽知覚認知学会設立当時の役員(「音楽知覚認知研究」第1巻より転載)
 <日本音楽知覚認知学会役員> 
 顧問  浅井憲(京都市立芸術大学名誉教授),大山正(日本大学)
 会長  難波精一郎(大阪大学)
 副会長  大串健吾(京都市立芸術大学)
 常任理事  桑野園子(大阪大学)
 理事  阿部純一(北海道大学),井口征士(大阪大学),梅本堯夫(京都大学名誉教授),
 大浦容子(新潟大学),小坂直敏(NTT),苧坂満里子(大阪外国語大学),
 後藤倬男(愛知県立芸術大学),小谷津孝明(慶応義塾大学),
 佐々木隆之(宮城学院女子大学),佐藤充彦(相愛大学),重野純(北里大学),
 菅千索(和歌山大学),田口友康(甲南大学),津崎実(ATR),
 中島祥好(九州芸術工科大学),中山一郎(大阪芸術大学),平賀譲(図書館情報大学),
 古矢千雪(広島文化女子大学),星野悦子(上野学園大学),宮坂栄一(NHK),
 村尾忠廣(愛知教育大学)
 幹事  荒川恵子(大阪大学),山崎晃男(大阪大学)
 会員状況  名誉会員 1名,一般会員 189名,学生会員 20名