2006年度春季研究発表会プログラム(詳細版)

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日本音楽知覚認知学会2006年度春季研究発表会プログラム
    2006年5月20日(土)、21日(日)
    於: 金城学院大学  (世話役: 村尾忠廣 先生)
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■ 講演: 30分 (発表20分+質疑応答8分+入れ替え2分)
■ ○印は発表者、◎印は研究選奨受賞の有資格者を表す。
※理事会 : 5月20日(土) 10:30 ~ 12:00
5月20日(土)
セッション1 12:45 14:45 座長: 星野 悦子
[1] 12:45 13:15 0:30 ○小川容子(鳥取大学)、村尾忠廣(愛知教育大学) 二つの主音をもつ和洋折衷旋律:その記憶と再生における年齢別スキーマの相違をめぐって 本研究は,Cohen(2002) の追研究であり,2つの主音をもつ旋律の再生実験である。イスラエルの伝承旋律と西洋機能和声音楽の折衷は,二つの異った主音を長二度関係に並列するとい う意味で,日本の子どもの作り出した和洋折衷わらべ唄や,中田喜直の作品と同じである。しかし,Cohenの実験課題である折衷旋律は,構造的に不自然な 感じをぬぐいえない。本実験では,この実験課題を日本のわらべ唄風に作り直した。被験者は大学生20名,幼稚園児20名,高校生20名である。それぞれの 再生過程における変容を比較分析した。
[2] 13:15 13:45 0:30 ○村尾忠廣(愛知教育大学) 明治30年代「唱歌調スキーマ」による旋律記憶とその再生 ― 「兎と亀」の変形パターンの調査・分析を通して 明治30年代に作曲され,愛称され た唱歌「兎と亀」は,楽譜によらず,わらべ唄のように伝承されてきた。そのため,作曲されたオリジナルが知られることなく,今日にいたるまでさまざまな変 形パターンで歌い継がれてきている。我々の調査では,このような変形が地域,言葉のイネトネーション,音楽学習歴などの要因を越えて共通して見られた。こ れは,伝承わらべ唄と決定的に異る点である。なぜ,言葉のアクセントさえも越えて共通した変形化がおこなわれてきたのだろうか。本研究は,唱歌の旋律推移 確率と7・5調モーラの同音反復処理という二つの視点から「明治30年代唱歌調旋律スキーマ」を発想し,これによって変形化の理由を明らかにしようとする ものである。
[3] 13:45 14:15 0:30 ◎中野倫靖 (筑波大学 大学院 図書館情報メディア研究科)、後藤真孝 (産業技術総合研究所)、平賀譲  (筑波大学 大学院 図書館情報メディア研究科) 原曲を知らない聴取者による無伴奏歌唱の歌唱力評価 本研究では、歌唱力を自動的に評価 する手法の開発を目指し、人間による歌唱力評価を調査する。初めて聴取する1フレーズ(10数秒)の無伴奏歌唱を被験者に呈示し、順位法によって評価させ た。Spearmanの順位相関係数ρを用い、聴取者間の評価には高い相関が見られることを報告する。
[4] 14:15 14:45 0:30 ◎中田智子、阿部純一(北海道大学大学院文学研究科) 歌再認における音楽と言語の影響関係 歌の詞と旋律が互いの記憶に与える影響は、双方向的に等しいのであろうか、それとも非対称的なのであろうか。旋律の付加が詞の再認を促進する効果、詞の付加が旋律の再認を促進する効果について検討した。
14:45 15:00 0:15 休憩
シンポジウム 15:00 17:00
[S] 15:00 17:00 2:00 司会: 南曜子(金城学院大学)、企画・問題提起: 村尾忠廣(愛知教育大学)、パネリスト:難波精一郎・桑野園子(大阪大学)、 新山王政和(愛知教育大学)、ゲストスピーカー: 藤井知昭 (中部大学) シンポジウム企画: 音楽と運動(映像)ビートのタイムラグ -文化化(acculturation)か熟達化(expertise)か 企画意図:
 音楽知覚認知学会ではこれまで映像的運動と音楽の関係について研究発表がなされてきたが,この問題をさまざまな研究ジャンルの人が集まって多角的に議論 をしたことがない。(本学会員もこの種の研究を他の学会で発表していることが多く,研究の交流も活発とはいえなかった。)企画者の村尾はタゴビートの視点 から日本人における運動と音楽のタイムラグを理論的に,そしてまた縄跳び遊びの縄ビート,足ビート,唄ビートの関係を実証してきた。新山王政和は,熟達化 の視点からマーチングのステップや指揮の拍点と楽器音のビートのずれを,南曜子はお手合わせ唄の西洋人と日本人のビートのとらえかたの違いを実証してき た。一方,桑野・難波たちは空間図形の運動と音の適合関係を音楽的様式とは独立した視点から実証してきた。こうしたこれまでの研究を振り返り,まとまなが ら,本シンポジウムでは,国際的に著名な民族音楽学者藤井知昭氏をお招きして音楽と運動のビート知覚の問題を日本と他のアジアの民族音楽という視点からお 話しいただき,議論に加わって頂く。
17:00 17:35 0:35 総会
18:00 20:00 2:00 懇親会
5月21日(日)
セッション2 9:00 10:30 座長: 津崎 実
[5] 9:00 9:30 0:30 ○尾山和之、安達真由美(北海道大学大学院文学研究科) 日本人大学生の拍子知覚における学校音楽教育と学校外音楽学習の影響 Hannon and Trehub (2005)によると、カナダ人大学生は音楽経験に関わらず単純拍子に対するバイアスを持っており、それは成長する過程でより多く触れる機会のある音楽の 拍子傾向に由来するものだと言う。本研究では、日本人大学生が成長する過程でより多く触れる機会のある拍子を明らかにするとともに、その拍子傾向に対する バイアスと、拍子知覚における音楽学習経験の影響について検証した。
[6] 9:30 10:00 0:30 ◎村上康子(東京芸術大学大学院) ピアノ学習におけるアウフタクトの獲得について 本発表の目的は,ピアノ指導において学習者がどのように表現を獲得していくのかを探ることである。ここでは特にアウフタクトに焦点を当て,音,身振り,表情,言語表現といったものから,学習者の表現に変化をもたらした要因を探り出していく。
[7] 10:00 10:30 0:30 ◎本吉達郎、塩瀬隆之、川上浩司、片井修(京都大学大学院 情報学研究科) 音楽的解釈の伝達過程におけるインタラクションに関する考察 楽器演奏において音楽的解釈の伝達を行う際に,あえて奏法に関する具体的な指示を避け解釈の受け手側に解釈の幅を持たせた方が,当事者間に良好なインタラクションが発生する場合がある.このようなインタラクションにおける定性的情報の流れに関する考察を行う.
10:30 10:45 0:15 休憩
セッション3 10:45 12:15 座長: 谷口 高士
[8] 10:45 11:15 0:30 ◎松本じゅん子(長野県看護大学看護学部) 音楽の選好における気分の影響-実験と日常的な音楽聴取から- 音楽の選好における気分の影響を実験と質問紙調査によって調べた.その結果,楽しい気分の時よりも悲しい気分の時の方が,より様々な感情価をもつ音楽が好まれる傾向がみられた.また,調査からJ-POPなど日常的に聴かれている音楽を実験に用いることも必要と考えられた.
[9] 11:15 11:45 0:30 ◎橋浦達也、鈴木碧、山田真司(金沢工業大学) 音楽がホラーゲームの怖さに及ぼす効果 ホラーゲーム「バイオハザード」シリーズを用いて,音楽がゲーム(映像と音楽を組み合わせた刺激)の印象に及ぼす効果を調べた.その結果,重苦しい音楽を付けると,ゲームの印象が暗く・力動的になり,怖さが増すことが分かった.
[10] 11:45 12:15 0:30 ○佐藤正之(三重聖十字病院、三重大学医学部神経内科)、武田克彦(日赤医療センター神経内科)、長田 乾(秋田県立脳血管研究センター神経内科)、下瀬川恵久(秋田県立脳血管研究センター放射線科)、葛原茂樹(三重大学医学部神経内科) 伴奏認知のメカニズム:地と図? 今回われわれは伴奏の認知に関与する脳部位についてpositron emission tomographyを用いて調べた。その結果、視覚連合野としてしられる後頭葉外側面が両側性に活性化した。視覚認知の過去の報告に基づき、同活性化部位の機能的意義について考察する。
12:15 13:15 1:00 ランチ
セッション4 13:15 14:45 座長: 平賀 譲
[11] 13:15 13:45 0:30 ○小堀 聡(龍谷大学理工学部電子情報学科)、高橋 勝則(龍谷大学大学院理工学研究科電子情報学専攻) ギター視奏における先読み時間について ギター視奏時の被験者の眼球運動と指と手の動きを測定し,楽譜の先読み時間を算出することで,被験者の習熟度,課題曲の難易度,課題曲に対する知識・習熟などが,先読み時間に与える影響について明らかにした。
[12] 13:45 14:15 0:30 ○長嶋洋一(静岡文化芸術大学) 著作権フリーBGM自動生成システムの拡張について(1) - FMC3からの発展 – 誰でも手軽に作品系FLASHコンテンツの音楽パートを自動生成するシステム」として開発した「FMC3」(Free Music Clip for Creative Common)からの発展として、作品系コンテンツから対象領域をより拡大拡張しつつ、「使える音楽を自動生成する」というコンセプトを継承した自動作曲のアルゴリズムの戦略について検討した。
[13] 14:15 14:45 0:30 ○鈴木晋太郎、布袋田由理子、竹中毅、上田完次(東京大学人工物工学研究センター) 感覚的協和理論に基づくマルチエージェント作曲モデル 本論文では,感覚的協和理論に基づくマルチエージェント作曲モデルを 提案し,創発の視点から,人間の作曲活動の理解を試みた.まず,作曲モデルを用いて曲を生成し,生成曲と既存の音楽理論との比較,および,被験者による聴取実験を行った.