平成18年度秋季研究発表会

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日本音楽知覚認知学会2006年度秋季研究発表会プログラム
(日本音響学会音楽音響研究会と共催)
    2006年11月11日(土)、12日(日)
    於: 金沢工業大学  (世話役: 山田真司 先生)
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■ 講演: 25分 (発表17分+質疑応答6分+入れ替え2分)
■ ◎印は研究選奨受賞の有資格者を表す。
※理事会 : 11月11日(土) 12:30 ~ 13:30
11月11日(土)
セッション1 9:00 10:40 座長: 菅野禎盛
[1] 9:00 9:25 0:25 物体の運動と音に同期させた等間隔打叩の時間ゆらぎ ◎益田昇、山田真司(金沢工業大学) 人間が音と物体の運動のタイミングが同期して呈示される刺激に合わせて打叩を行った時の時間制御について検討を行った。その結果、音刺激と視覚刺激の両方が呈示されるときには、音刺激だけに頼った時間制御が行われることが示唆された。
[2] 9:25 9:50 0:25 音と光のタイミングが非同期な刺激に合わせた打叩の時間制御 ◎榎孝平、益田昇、山田 真司(金沢工業大学) 音と光が非同期の刺激に合わせて打叩を行った場合、どのような制御が行われるかについて調べた。その結果、光刺激を無視し、音刺激のみに合わせた打叩の制御が行われることが明らかになった。
[3] 9:50 10:15 0:25 音と映像の同期性の知覚に関する研究 -物体の様々な運動パターンによる効果- ◎鷲北浩平、榎孝平, 山田真司(金沢工業大学) 球がバーに向かって動く3種類の運動刺激とバー上に球が突然現れる刺激を用い、映像と音の非同期性の検知閾を恒常法によって求めた。その結果、映像と音の同期性の知覚には、「予期」が重要な役割を果たすことが明らかになった。
[4] 10:15 10:40 0:25 音楽がアミューズメントゲームの成績に与える影響 ◎勝崎利光、榎孝平、山田真司(金沢工業大学) 本研究ではパチスロゲーム大花火を用いて、音楽がゲームの成績に与える影響を調べた。その結果、「重く」て「落ち着きの無い」音楽はゲーム遂行中の集中力を低下させ、成績に悪影響を及ぼすことが示唆された。
10:40 10:50 0:10 休憩
セッション2 10:50 12:30 座長: 安達真由美
[5] 10:50 11:15 0:25 日本人の伝統的美意識と音楽的感性の変化―短旋法の音楽はいつ頃からなぜ好まれなくなってきたのか― 村尾忠廣(愛知教育大学) 戦 後の歌謡曲は「りんごの唄」、「青い山脈」、「喜びも悲しみも幾年月」、「高校三年生」と上げていけば切りがないほど短旋法で作られた唄が多い。歌謡曲ば かりではない、明るい未来を歌おうとする「歌声運動」でとりあげられたものもほとんどがロシアを中心とした「短旋法」の曲であった。70年代に入ればこの 傾向はいっそう強くなる。金田一春彦が述べたように、音楽に限らず日本人は、憂い、感傷を好む民族だったのだろうか。ところが、この短旋法を今日のJ. ポップスのヒット曲から探し出すのは難しい。教科書からも短旋法が減少してきている。いったい、いつごろから、なぜ、このような日本人の感性の大変化が起 きてきたのか。本発表では、統計的調査に基づきながら、この変化の実態を明らかにしつつ、その原因を探ろうとするものである。
[6] 11:15 11:40 0:25 変動する2つの主音をもつ和洋折衷旋律の再生(その2)―INBALIMとマル書いてチョン― 小川容子(鳥取大学)、村尾忠廣(愛知教育大学) 本研究は,2006年春季に発表した「二つの主音をもつ和洋折衷旋律–その記憶と再生における 年齢別スキーマの相違をめぐって–」の追研究である。同じ実験課題を用いて,幼児教育を専攻とする学生達に再生及びお絵描き歌の創作を課した。前回と同 様,冒頭部分でのかなりの変容が見られること,絵を描く作業を通して,旋法終止音がより強固になる様子が確認された。
[7] 11:40 12:05 0:25 MIDI機器の記録精度に関する調査 寄能雅文、三浦雅展(龍谷大学・理工)
[8] 12:05 12:30 0:25 音楽知覚研究用ツールSTRAIGHT&aimmatの機能 津崎実(京都市立芸術大学、NICT/ATR-SLC) 音響信号の分析合成系STRAIGHTならびに聴覚初期過程のシミュレータaimmatはそれぞれ音刺激の作成、音響信号の解析の手段として強力なものである。この講演ではその機能と有効性を説明し、今後の音楽研究の本格的な進展に貢献したい。
12:30 13:30 1:00 ランチ
セッション3 13:30 15:10 座長: 江原史朗
[9] 13:30 13:55 0:25 普化宗曲の「間」について 今井仁(信州大学)
[10] 13:55 14:20 0:25 成人における読譜訓練の学習過程について 小堀  聡(龍谷大学・理工学部) 読譜訓練の経験のない者が成人になってから訓練を行った場合に,どの程度まで上達するのか,また,どのように上達するのかを検討した.本報告の段階では,1名の被験者を対象に2ヶ月間の訓練を実施した結果を報告する.
[11] 14:20 14:45 0:25 音楽演奏場面における参与者間の情報伝達過程 ◎河瀬諭、中村敏枝、片平建史、川上愛(大阪大学大学院・人間科学研究科) 音楽演奏は多くの場合,演奏者間や演奏者-聴取者間のコミュニケーションを伴って行われる.そこで,本研究では参与者間でどのようなコミュニケーションが行われているかについて,探索的に検討を行った.
[12] 14:45 15:10 0:25 歌に対する感情反応における歌詞と曲の効果 ◎岩井香織、安達真由美(北海道大学大学院・文学研究科)、山口浩(岩手大学大学院・人文社会科学研究科) 不快感情時における、聴取音楽の感情認知について、歌詞の印象がその曲全体の印象に及ぼす影響に ついて検討した。歌詞の印象(positive・negative)と、旋律の印象(happy・sad)を組み合わせた音楽を聴き手に提示し、心理指標 と生理指標を用いて実験を行った。その結果について報告する。
15:10 15:20 0:10 休憩
チュートリアル 15:20 17:00 座長: 三浦雅展
[T1] 15:20 16:10 0:50 チュートリアル: 音楽と感情 大串健吾
[T2] 16:10 17:00 0:50 チュートリアル: 楽器の発音メカニズムと音作りの工夫について 吉川茂 (九州大学)
17:00 17:05 0:05 休憩
特別講演 17:05 17:45 座長: 岩宮眞一郎
[S] 17:05 17:45 0:40 特別講演: 日本語を歌・唄・謡う -共通詞のうたい分け- 中山一郎(大阪芸術大学) 「日本語をどのように“うたう”か・・・?」という目的意識を持って、共通の歌詞(共通詞)を、邦・洋楽の31分野の78名(うち人間国宝18名)に無響室内で、各分野での典型的な歌唱表現法で「うたい分け」を行わせた(DB『日本語を歌・唄・謡う』(CD18
枚組)として公開)。本講では、得られた演唱の例を参照(ビデオ映像)しつつ、「日本語をうたう」ことについて考える。
17:45 17:50 0:05 表彰式
17:50 18:00 0:10 片付け&移動
18:00 20:00 2:00 懇親会
11月12日(日)
セッション4 9:00 10:40 座長: 大浦容子
[13] 9:00 9:25 0:25 サウンドによる映像酔いの抑止にむけて(1) 長嶋洋一(静岡文化芸術大学) 水平方向/垂直方向のズーム/並行移動と回転を加えて映像酔いを起こしやすいように変化させたムービーの運動に同期して、その予測に役立つような変化のサウンドを加えることで映像酔いが低減できるかどうかについて心理学実験を行ったので報告する。
[14] 9:25 9:50 0:25 音信号、光信号とリズムの第1拍との同期判断、および信号が非同期の時の動作による補正について 難波精一郎、桑野園子、市丸朋史(大阪大学) 4拍子のリズムの第1拍と音あるいは光パルスの同期判断と、パルスが遅れた時の動作による遅れの補正の可能性についての実験。
[15] 9:50 10:15 0:25 音響生態学に基づいたサイン音のデザイン 川上央 (日本大学芸術学部)、渡辺ローザ (日本オペラ振興会)、ターデュ・ジュリアン、スシーニ・パトリック (SMTS-IRCAM-CNRS) 屋外空間におけるサイン音などは、周囲の環境を考慮して提示されなればならないことは明白であるが、今回は、SchaferのKeynoteを考慮し、環境音からスペクトルセントロイド法によって、サイン音の提示環境のニッチに調和するようなデザイン方法を検討した。
[16] 10:15 10:40 0:25 継時的に鳴る2音の音高変化がサイン音の機能イメージに及ぼす影響 ◎藤田愛子(九州大学芸術工学府)、岩宮眞一郎(九州大学芸術工学研究院) 継時的に鳴る2音の音程,変化方向が「警報」「開始」「終了」といったサイン音の機能イメージに及ぼす影響を,聴取実験により明らかにした。「開始」には3度の上昇,「終了」には3度の下降音程ふさわしい等の傾向が得られた。
10:40 10:50 0:10 休憩
セッション5 10:50 12:30 座長: 柳田益造
[17] 10:50 11:15 0:25 日本の童謡・唱歌100曲の認知における歌詞とメロディーの関係 ◎齊藤陽子(東京医科歯科大学大学院、東京都老人総合研究所)、佐久間尚子、石井賢二(東京都老人総合研究所)、水澤英洋(東京医科歯科大学大学院) 日本の童謡・唱歌100曲の親密度、獲得年齢、明るさの程度の属性を調査し、3タイプ(歌唱、メロディー、歌詞の朗誦)の聴覚刺激を用いて、歌唱の認知過程における言葉とメロディーの関係を行動学実験にて検討した。
[18] 11:15 11:40 0:25 ポルタメントのタイミング知覚 -開始点と終了点に対する聴知覚感度からの検討- ◎田中里弥(京都市立芸術大学大学院・音楽研究科)、津崎実(京都市立芸術大学・音楽学部、NICT/ATR音声言語コミュニケーション研究所)、加藤宏明(ATR認知情報科学研究所/NICT) ポルタメントの開始点と終了点について、人間の聴知覚ではどちらの時間的変化に対してより敏感であるかを調査する実験を行った結果、開始点の方により敏感であることが示唆された。この結果から、聴覚ではポルタメントのどの部分でタイミングを知覚するのか検討した。
[19] 11:40 12:05 0:25 ”音の形容詞”を介した楽器演奏法の伝達過程に関する考察 ◎本吉達郎、川上浩司、塩瀬隆之、片井修(京都大学大学院・情報学研究科) 本研究ではこれまで”音の形容詞” の共有過程における定性的情報の流れを捉える数理的枠組みの構築に取り組んできた.この枠組みに対する裏付けを得るために,今回は楽器の奏法に関する具体 的な指示を避けて音楽的解釈の伝達を行った際に,解釈の受け手が奏法を変化させる過程を分析した.
[20] 12:05 12:30 0:25 感動体験Chillsと皮膚コンダクタンス反応との関連性について ◎雨宮薫(慶應義塾大学大学院)、梅田聡、小嶋祥三(慶應義塾大学) 音楽による感動体験Chillsが皮膚伝導反応(SCR)を引き起した。この結果は個人選好音楽のみでなく、一般的なChills誘発曲に対しても見られた。
12:30 13:30 1:00 ランチ
セッション6 13:30 15:10 座長: 森下修次
[21] 13:30 13:55 0:25 ピアノ導入教育のための学習支援システムの実現を目指して 北村環、三浦雅展(龍谷大学・理工学部)
[22] 13:55 14:20 0:25 ピアノ独習者に最適な基礎練習課題の動的生成とその効果 ◎江村伯夫(同志社大学大学院)、三浦雅展(龍谷大学・理工学部)、柳田益造(同志社大学工学部)
[23] 14:20 14:45 0:25 ピアノ音階演奏における熟達度の自動評価 秋永晴子(夙川学院短期大学・児童教育学科)、江村伯夫(同志社大学大学院)、三浦雅展(龍谷大学・理工学部)、柳田益造(同志社大学・工学部)
[24] 14:45 15:10 0:25 メロディ認知とそれに随伴する事象関連電位の検討 ◎福井ゆきの(福島大学大学院・教育学研究科)、福田一彦(福島大学・共生システム理工学類) 本研究では、メロディ認知の背景にあると考えられる生物学的プロセスを探ることを目的とした。文化的影響を除くためコンピュータで音列を生成し、さらに事象関連電位を用いてメロディ処理を行う脳部位について検討した。
15:10 15:20 0:10 休憩
セッション7 15:20 16:35 座長: 山田真司
[25] 15:20 15:45 0:25 音楽演奏における感情的意図の表現:プロドラマーと特別な音楽的訓練を受けていない演奏者の比較 山崎晃男(大阪樟蔭女子大学) 即興的な打楽器演奏を通じた感情の表現(怒り、喜び、悲しみ、それぞれ3強度)について、プロのドラマーと特別な音楽的訓練を受けていない者を被験者とした演奏実験を行い、演奏を分析、比較した。
[26] 15:45 16:10 0:25 文系学生に対する音響学教育 -言語聴覚士養成課程での実践- 吉田友敬(名古屋文理大学・情報文化学部) 言語聴覚士の養成課程において音響学が必修科目になっている。しかし、学生の大半は文系出身者で物理学の履修経験がなく、微積分の基礎知識も薄い。そのような前提で、音響学(特に聴覚・音声)教育の可能性を追求した。
[27] 16:10 16:35 0:25 日系三世と地元民の和太鼓演奏の比較 森下修次(新潟大学) 佐渡の現地で鬼太鼓(おんでこ)において佐渡の地元の人の演奏と在米の日系三世の太鼓奏者を聞き比べる機会を得た。全く同じリズムを同じテンポで奏でているにもかかわらず付点にリズムのところに差が現れた。