平成15年度春季研究発表会 発表プログラム(要旨付)

  • 日時: 2003年 5月17日(土) 13:00~17:00、 18日(日) 9:30~12:15
  • 場所: 新潟大学 総合教育研究棟
  • 懇親会:  5月17日(土)18:00~20:00 夢尽蔵 (案内・申込み)
  • 時間配分(合計 25 分):発表時間 20 分、質疑応答 4 分、交代 1 分
  • ◎印がついているのは、学会選奨対象者です。

5月17日(土) 13:00~17:00
時間 発表タイトル 著者 要旨
13:00 司会: 佐々木 隆之 (13:00-14:40)

13:00

13:25
音楽による感情のコミュニケーション(3)-幼児による打楽器の即興演奏-
Emotional communication in music (3): Improvised percussion performance by children
山崎晃男(大阪樟蔭女子大学)
YAMASAKI Teruo (Osaka Shoin Women’s University)
 聴いた人がいくつかの基本的感情を喚起するようにタンバリンを用いた即興的演奏を行うよう、 幼稚園児に求めた。 喚起することを求めた感情は、うれしい、悲しい、怒った、怖いの4つであった。 幼児たちの演奏を分析し、演奏ルールについて検討した。

13:25

13:50
リズム描画に見る児童の形態的・拍節的認知
Figural and metrical notations of rhythm patterns by elementary school children
小川容子(鳥取大学)、◎佐々木唯(鳥取大学大学院)
Yoko OGAWA and Yui SASAKI(Tottori University)
 本研究は、昨年発表した「描画に見られる音楽非専攻学生のリズム聴取」の追研究であリ、 実験者が提示した8種類の簡単なリズムパターンを絵に描かせるリズム描画を課題とした。 被験者は鳥取大学附属小学校2年生37名と5年生35名である。 実験の結果、2年生の描画は拍節的描画と形態的描画以外に、繰り返し(グルーピング)、 数え上げ(カウンティング)、類像(アイコン)など多様な下位グループに分類された。 一方5年生の描画は、拍節的描画と形態的描画に約2分された。

13:50

14:15
リズムの符号化ストラテジー -ピアノ熟達者の多重符号化に関する検討-
Encoding strategy of rhythm –Study concerning multi-encoding among piano experts–
◎出田和泉(川崎医療福祉大学大学院)
Izumi Izuta (Graduate School of Kawasaki University of Medical Welfare)
 Mikumo(1997)は音楽家が音高を記憶する際に、単一の符号化ではなく、 言語表象、聴覚表象、視覚表象などを組み合わせた多重符号化を行うことを報告した。 そこで本研究では、ピアノ熟達者とピアノ非熟達者における表象モダリティーによる記憶成績を比較し、 ピアノ熟達者の多重符号化を検討した。 9音のリズムを提示し、10秒後にタッピングおよび描画で再生することおよび、 WMS-Rの言語性、視覚性記憶課題を被験者に求めた。 リズムの保持期間には、4条件(無音、視覚、聴覚、視聴覚)の干渉刺激を挿入した。 熟達者は、統制条件と聴覚、視聴覚条件との間に有意差がみられたが、 非熟達者は4条件間に有意差はみられなかった。 また熟達者は、WMS-Rの言語性、視覚性記憶との相関がみられたが、 非熟達者は言語性記憶とのみ相関がみられた。 非熟達者は単一の符号化ストラテジーを用いる傾向にあるが、 熟達者は複数の表象モダリティーを符号変換および併用して用いることが示唆された。

14:15

14:40
音楽的ビートが映像的ビートの知覚に及ぼす引き込み効果(1) – その第1報と実験計画 —
Drawing-in effect on perception of beats in multimedia (1) — The 1st report and experiments design —
長嶋洋一 (SUAC/ASL)
Yoichi Nagashima (SUAC/ASL)
 一定のテンポでビート感をもった映像と音響を同時に試聴している環境下で、 映像と音響のテンポのわずかな違いからビート感がずれてきた場合にどのような振舞いをするか、 についての心理学実験について、第1報として概要と実験計画について報告する。
休憩
14:55 司会: 古矢 千雪 (14:55-16:10)

14:55

15:20
ネガティブな感情価の高い音楽に対する同質感の変化  - 抑うつ的音楽の連続聴取における気分変化の検討 -
The change of listener identification with negative music — a study on the relationship of continuous listening of depressive music and its effects on the human psyche —
◎古賀弘之(広島大学大学院教育学研究科学習開発専攻学習基礎・支援分野)
Hiroyuki KOGA (Learning and Curriculum Development: Specialization in Development and Facilitation of Learning, Hiroshima University)
 被験者をポジティブもしくはネガティブな気分へ誘導し、2つの抑うつ的な音楽を連続聴取させた。 それぞれの音楽聴取後の (1) 音楽に対する印象、(2) 音楽に対する同質感、(3) 気分の測定を行い、 変化について検討を行った。

15:20

15:45
青少年の音楽行動と攻撃性
The relation between musical behavior and aggression in adolescents
福井一 *、◎久田清人**、豊島久美子**、田原伸浩* (*奈良教育大学、**奈良教育大学大学院)
Hajime Fukui, Kiyoto Kuda, Kumiko Toyoshima and Nobuhiro Tahara (Nara University of Education)
  10歳~15歳の221名(男97名、女124名)を対象に、音楽行動と攻撃性に関する質問紙調査を実施した。 その結果、男女ともに、攻撃性と音楽行動(聴取、歌唱等)に有意な正の相関が得られた。

15:45

16:10
”かの一なるもの永遠にして多に分かたるしかも一にして永遠にだた一つなり一の中から多を見い出し、 多を一のごとく感ぜよさらば芸術の始めと終わりとを会得せん”の具現化、視覚化を試みた” Kens ダイアグラム
Kens diagram visualizing Goethe’s view on art
◎櫻井健(自営・元ニュー・イングランド音楽院(ジョージ・ラッセル教授助手))
Ken Sakurai (Self-Employed: formerly New England Conservatory of Music (Assistant of Prof. George Russell))
休憩
16:25

17:00
日本音楽知覚認知学会総会
18:00

20:00
懇親会(於:「夢尽蔵」)
 
 
5月18日(日) 9:30~12:15
時間 発表タイトル 著者 要旨
09:30 司会: 山田 真司 (9:30-10:45)

09:30

09:55
異名同音の音高シラブルが音楽的音高の同定に及ぼす干渉効果
Interference effects on musical pitch identification by enharmonic pitch syllables
大西潤一、吉富功修(広島大学大学院教育学研究科)
Junichi Ohnishi, Katsunobu Yoshitomi (Graduate School of Education, Hiroshima University)
 固定ド唱法であっても、異名同音関係の音高については同一の音楽的音高が異なる音高シラブルで歌われる。 本研究では、異名同音関係にある音楽的音高が、接触頻度の高い音高シラブル (たとえばF#/G♭に対する「ファ」)で歌われた場合と、 低い音高シラブル(同「ソ」)で歌われた場合とで、 同定成績および反応時間に差が見られるかどうか検討する。

09:55

10:20
バス課題にふさわしいバスパートの自動生成
Automatic generation of apropriate bass sequences for given bass tasks
◎幸田拓也(同志社大院)、三浦雅展(龍谷大・理工)、柳田益造(同志社大・工)
Takuya KODA (Graduate School of Eng., Doshisha Univ.), Masanobu MIURA (Fac. of Sci. and Tech., Ryukoku Univ.), and Masuzo YANAGIDA (Fac.of Eng., Doshisha Univ.)
 和声法習得にはバス課題などの和声課題の実施が必須であるが、 教科書に記載されている課題の数は学習者にとって十分でないのが現状である。 ここでは学習者が様々な種類のバス課題を選択・実施できることを目的とし、 バス課題にふさわしいバスパートの自動生成について検討している。

10:20

10:45
モンゴル歌唱「ホーミー」発声における声帯波の特徴について
Features of vocal code waves characterized by Mongolian biphonic singing Hoomij
村岡輝雄、大箸匠 (武蔵工業大学)、武田昌一 (帝京平成大学)
Muraoka Teruo, Ohashi Takumi (Musashi Institute of Technology), Takeda Shoichi (Teikyo Heisei University)
 モンゴル歌手による「ホーミー」に対してLPC逆フィルタを適用して声帯音源に近似した波形を抽出し、 一般人の通常発声における波形と比較した結果、 「ホーミー」発声における声帯波は高調波に富みしかも高域での強度が大きいとの結果を得た。
休憩
11:00 司会: 福井 一 (11:00-12:15)

11:00

11:25
ステレオ録音再生におけるマイク配置と音場感の表現について
Effects of microphonic arrangements to sound-field representation in stereophonic recording-reproducing
村岡輝雄、市川正紀、中里智章 (武蔵工業大学)
Muraoka Teruo, Ichikawa Masanori, Nakazato Tomoaki (Musashi Institute of Technology)
 コンサートホール内に幾つかの収音マイクを配置してステージ上の音源を録音し、 それらを試聴室で再生して聴取位置に置いたダミーヘッドの両耳間相関を計測。 それらをコンサートホール内の客席に置いた同じダミーヘッドで計測した両耳間相関を基準に比較して マイクを配置による音場感の表現を検証した。

11:25

11:50
音色想起時の脳活動の研究
Analysis of brain activation while imaging various sounds
◎川上央(日本大学芸術学部音楽学科)
Hiroshi KAWAKAMI (Dept. of Music, College of Art, Nihon University)
 音色認知には脳機能上様々なモジュールを複合的に活用していると予測されるが、 音色認知に重要と考えられる記憶との関係について考える場合、 言語野を中心とする左半球の活動も無視できない。 音韻想起の先行研究では、ブローカ野が活動することが報告されている(Mummery 1996)が、 音色想起時の左半球活動を確認するため、未知音を含む9つの音色を、聴取させることなくイメージさせ、 その時の脳活動を脳波により分析した。 その結果、左半球に有意な活動が見られた。

11:50

12:15
馴染みのメロディーの認識に関与する脳内部位について -PETによる研究-
Activated brain regions in the recognition of familiar melodies: A PET study
佐藤正之1,2)、 葛原茂樹1)、 武田克彦2)、 長田乾3)、 畑澤順4)
(1) 三重大神経内科、2) 日赤医療センター神経内科、 3) 秋田脳研神経内科, 4) 放射線科)
Masayuki Satoh, Shigeki Kuzuhara (Department of Neurology, School of Medicine, Mie University), Katsuhiko Takeda (Department of Neurology, Japanese Red-Cross Hospital), Ken Nagata, Jun Hatazawa (Department of Neurology/Radiology, Akita Blood Vessel Research Institute)
 今回われわれはpositron emission tomography (PET)を用いて、 馴染みのメロディーの聴取に関与する脳部位を調べた。 馴染みのメロディーの認知の際には、両側の側頭葉前部、上側頭回、前頭葉内側面、帯状回、 海馬と左下前頭回が活性化した。 側頭葉前部はメロディーの記憶からのretrievalに、上側頭回と左下前頭回は言語的な意味情報の処理に、 前頭葉内側面と帯状回は呈示されたメロディーと記憶との照合に、 海馬は情動に関連して活性化したと考えられた。
12:15 終了