平成15年度秋季研究発表会 発表プログラム(要旨付)

  • 日時: 2003年11月15日(土) 13:00~18:10、 16日(日) 9:30~15:55
  • 場所: 青山学院大学 青山キャンパス6号館 第4会議室(15日), 総研ビル11階 第19会議室(16日)
  • 懇親会: 11月15日(土)18:30~20:30 青学会館1階レストラン (案内・申込み)
  • 時間配分(合計 35 分):発表時間 25 分、質疑応答 8 分、交代 2 分
  • ◎印がついているのは、学会選奨対象者です。

11月15日(土) 13:00~18:10
時間 発表タイトル 著者 要旨
13:00 座長: 安達 真由美 (13:00-15:20)

13:00

13:35
歌の聴取印象において詞と旋律が互いに及ぼす影響――「喜ばしさ-悲しさ」尺度を中心に――
Mutual effects of lyrics and melody on the impression of listening to songs: with special reference to “happy-sad” scale.
○星野 悦子(上野学園大学)
Etsuko HOSHINO(Uenogakuen University)
歌の聴取で人は何をどの程度聴いているのか。言葉と旋律はどのように融合したり、競合したりするのか。本研究では、「喜ばしい-悲しい」の情緒尺度において値が4段階に異なっている旋律および詞(短歌)それぞれ2種類について、双方の段階の同じものや違うもの全てを組み合わせた実験的歌曲を呈示し、歌になった場合の「喜ばしさ-悲しさ」印象がどのように変化するかを探る。また、その他の尺度についても検討する。

13:35

14:10
「癒しの音楽」聴取が気分変動に及ぼす影響について
Effects of ‘healing music’ listening on mood change
○菅 千索, 野村 仁美 (和歌山大学教育学部)
Sensaku SUGA and Hitomi NOMURA (Faculty of Education, Wakayama University)
最近は「癒しの音楽」と称する音楽メディアが多く発売されているが、本当に従来の音楽と比べて何か特別な効果はあるのだろうかという観点から、クラシックの原曲(ショパン「雨だれ」)をジャズ風にアレンジした「癒しの音楽」1曲を採り上げて予備的な実証的研究を行った。

14:10

14:45
音楽作品の内容の認知に関する質的研究―音楽専攻学生と一般短大生の比較―
A qualitative study of images evoked by music: comparison between musicians and non-musicians
○大岩 みどり(武庫川女子大学)
Midori OIWA (Mukogawa Women’s University)
音楽専攻学生50名と一般学部学生50名に、刺激作品を、作曲者やタイトルなどの情報を一切伝えずに聞かせ、想起されたイメージをたずね、その内容を比較した。

14:45

15:20
ピア・ティーチング—幼稚園児を対象とした事例研究
Children’s peer teaching : A case study of learning from preschool children
小川 容子(鳥取大学),◎佐々木 唯(鳥取大学大学院)
Yoko OGAWA, Yui Sasaki (Tottori University)
本研究は,子どもが子どもに教える場面において,どのような方略が用いられているのかを明らかにしようとしたものである。課題は,「キラキラ星」の前半4小節の,鉄琴(オルフ楽器)演奏である。実験の結果,教える側の園児は「称賛」をほとんど用いず「批評/批判」的な言語を多く用いること,説明をせずに鉄琴を叩く,叩く箇所を指で示す,学習者の腕をつかんで叩かせる等の方略を用いていた。さらに,単音の繰り返しや,フレーズの区切りとは無関係に区切って教えることも多く認められた。一方,教わる側の園児は,「確認」や「自分への称賛」言語を用いて反応しており,教える側よりも多く音を出す傾向にあった。
休憩
15:35 座長: 岩宮 眞一郎 (15:35-17:55)

15:35

16:10
新潟市内野の三味線音楽における中立音程
Neutral interval on Shamisen music in Uchino, Niigata
○森下 修次 (新潟大学教育人間科学部)
Morishita Shuji (Fac. of Education and Human Sciences, Niigata Univ.)
新潟大学の地元、内野地区の老人が演奏する三味線音楽に関わる機会があった。音程感が一般的演奏と異なるため、録音を分析したところ、中音(主音から3度上の音)に特徴的な音程が見いだせた。

16:10

16:45
左視野の音楽記号の失読とバイオリンの演奏障害を呈した脳梁梗塞の一例
A case of callosal infarction representing left hemialexia of musical signatures and impairment of violin playing
○佐藤 正之(三重大学医学部神経内科),武田 克彦(日赤医療センター神経内科),葛原 茂樹(三重大学医学部神経内科)
Masayuki Satoh (Department of Neurology, School of Medicine, Mie University), Katsuhiko Takeda (Department of Neurology, Japanese Red Cross Medical Center), Shigeki Kuzuhara (Department of Neurology, School of Medicine, Mie University)
脳梁梗塞によりバイオリンの演奏障害を呈したアマチュアバイオリニストに対し,タキストスコープやDichotic Listening Testなどを用いて,脳梁離断症状の有無・性状を調べた.結果に基づき,楽譜の読みと演奏の脳内過程について,若干の考察を加えた.

16:45

17:20
スペクトル出力が音色の違いに及ぼす影響
The effect of spectrum power on difference of timbre
◎三戸 勇気(日本大学大学院芸術学研究科), 川上 央(日本大学芸術学部), 大蔵 康義(日本大学大学院芸術学研究科)
Yuki Mito(Graduate School of Art, Nihon University), Hiroshi Kawakami(College of Art Nihon University), Yasuyoshi Okura(Graduate School of Art, Nihon University)
第3倍音以下の倍音の出力を下げた音色と純音、整数倍音、奇数倍音の4つの音色を聴かせSD法により印象評価を行った。その結果、音色差による印象の違いが見られた。

17:20

17:55
音から想起されるイメージの影響を考慮した合成音の印象評価測定法の提案
Proposal for a Measurement Method of Impressions of Synthetic Sound Considering the Effect of Evoked Image
◎伊藤彰教(東京工科大学片柳研究所)
Akinori Ito(Katayanagi Advanced Research Laboratory, Tokyo University of Technology)
従来型の音色知覚研究の手法による成果は,音から想起されるイメージの影響が充分に考慮されていないなど,合成音の音楽的利用に際しての指標としてはいくつかの欠点がある.本研究では,従来型の非類似度調査に加え,聞き取り調査を組み合わせた印象評価・分析手法を提案する.
17:55

18:10
学会賞授賞式
18:30

20:30
懇親会(於:青学会館1階レストラン)
11月16日(日) 9:30~11:50
時間 発表タイトル 著者 要旨
09:30 座長: 山崎 晃男 (9:30-11:50)

09:30

10:05
An analysis of rhythm in Japanese and English popular music. ◎Makiko Sadakata(NICI, University of Nijmegen), Peter Desain(NICI, University of Nijmegen), Henkjan Honing(ILLC/ Music Department, University of Amsterdam), Aniruddh D. Patel & John R. Iversen(The Neurosciences Institute, California) There has been evidence that the rhythm in English and French musical themes are significantly different in their contrastiveness of successive durations in the same manner as those of spoken language (Patel & Daniele, 2003) using normalized Pairwise Variability Index (nPVI; Grabe & Low, 2002). In a case study, applying this measure to analyze rhythm in Japanese and English popular music, the preliminary result showed a significant difference between them, suggesting successive durations in Japanese popular music is less contrastive than in English. The effect is in accordance with those of spoken language.

10:05

10:40
円盤の運動と音の持続時間との視聴覚同期判断 ――刺激布置の影響――
Properties of Identical Response to Synchronization between Visual Object Motion and Duration of Sound.
◎若生 秀(京都大学大学院), 林 勇気(宝塚造形芸術大学), 難波 精一郎(宝塚造形芸術大学)
Shu WAKO(Kyoto University), Yuki HAYASHI(Takarazuka University of Art and Design), Seiichiro NAMBA(Takarazuka University of Art and Design)
一定の水平移動する円と、物理的同期より長く又は短く提示時間を変化させた音とを知覚的同期判断する実験を行った。終点の物理的同期が全体的同期判断を促進するという難波・林(2002本学会秋)と無矛盾で、新たに得られた刺激布置により異なる特性・開始点と終了点の同期特性の違いを検討した。これらから求められる物理的同期からの逸脱許容度は、映像・マルチメディア関連制作への応用という点でも重要である。

10:40

11:15
音楽的ビートが映像的ビートの知覚に及ぼす引き込み効果(4) — 実験結果の解析と概要検討 —
Drawing-in Effect on Perception of Beats in Multimedia (4) — 1st Analysis of Experimental Results —
○長嶋 洋一 (静岡文化芸術大学)
Yoichi Nagashima (Shizuoka University of Art and Culture)
本研究では、聴覚的・視覚的情報を同時に視聴するマルチメディアコンテンツの感覚間調和 intersensory harmony に関して、新たな視点でビートを「周期的に繰り返しリズムのノリが知覚されるアクセント部分」と再定義した。その上で、音楽的ビートが映像的ビートの知覚に及ぼす局所的な「引き込み効果」 (非線形システムの同調現象である引き込み現象 entrainment とは異なる) を提唱し、これを解析・検証するための新しい実験システムを制作し、被験者テストによる実験・評価を行った。本稿では第4報として、3種類の心理学実験で得られた実験データの第1段階としての概括的な解析・検討結果について報告する。合わせて、予備実験と追試実験で得られた知見についても報告する。

11:15

11:50
音高刺激と音声刺激による短期記憶干渉効果(無関連音効果)
The interference effect of irrelevant speech and irrelevant tones on immediate recall
○宮崎 謙一(新潟大学人文学部) 視覚提示された階名文字や数字の記憶再生に対してスピーチやピアノ音の聴覚刺激が及ぼす干渉効果を調べた.ピアノ音の干渉効果は一般の被験者では小さいが,絶対音感保有者ではスピーチに近い干渉効果が見られた.
休憩
13:00 座長: 長嶋 洋一 (13:00-15:55)

13:00

13:35
二声歌唱における発声の解析について
Consideration to articulative analyses of biphonic singing
村岡 輝男,◎大箸 匠(武蔵工業大学),武田 昌一(帝京平成大学)
Teruo Muraoka,Takumi Ohashi,Shyoichi Takeda
モンゴルおよびその周辺国に伝わる二声歌唱(シジット,カリグラなど)についてlpc逆フィルタにより声帯振動(残差波形)を抽出し,スペクトル解析を行った.その結果からハーモニクス成分以外に多くの周波数成分を含んでいることがわかった.またその特徴はダミ声の代表格である浪曲でも確認することができた.

13:35

14:10
ステレオ録音再生における正面音源位置と音場感の表現について
Study on stereophonic reproduction of sound field, related to the locations of sound sources
村岡 輝雄,◎市川 正紀,中里 智章(武蔵工業大学)
Teruo muraoka,Masaki ichikawa,Tomoaki nakazato
前回はホールのステージ中央に音源を置いて客席のダミーヘッドの両耳間相関係数を測定、更に4通りのマイク配置で収録した音をリスニングルームで再生した時の同じダミーヘッドによる両耳間相関係数と比較して音場感表現を評価した。今回は音源配置が異なる場合の音場感評価を報告する。

14:10

14:45
与えられた旋律に対する適切な和声付与の実現可能性
Realizability of Constructing Optimum Chord-Sequences to Given Melodies
○三浦 雅展(龍谷大),黒川 誠司,青井 昭博(OMRON),柳田 益造(同志社大)
Masanobu MIURA(Ryukoku Univ.), Seiji KUROKAWA, Akihiro AOI(OMRON Entertainment Co.,Ltd.), Masuzo YANAGIDA(Doshisha Univ.)
ここでは,和声法における和声課題の正解生成システムBDS&SDSを拡張することによって生成された和声付与システムについて述べている.和声付与システムは,和声法の規則体系をポップス用に書き換えることで実現され,さらに和音付与の高精度化を目指して,与えられた旋律に対する音楽的な解釈(ここでは刺繍音,経過音,先行音)を導入することにより,従来の和音付与システムよりも高い性能が得られていることを確認している.

14:45

15:20
ポピュラーミュージックを対象とした和声解析への情報処理的アプローチ
An algorithmic approach to harmony analysis of popular music
◎江村 伯夫(同志社大院), 三浦 雅展(龍谷大), 柳田 益造(同志社大)
Norio EMURA(Doshisha Univ.), Masanobu MIURA(Ryukoku Univ.), Masuzo YANAGIDA(Doshisha Univ.)
本稿では,ポピュラーミュージックの和声解析に1940年から50年代にかけてアメリカで確立されたJazz理論と呼ばれる和声理論を用いて和声解析を行うシステムを提案している.その中で,Root Motionの完全4度上行進行または短2度下行進行に伴ったTritone解決を検出することにより,ポピュラーミュージックの和声構造において重要な役割を担う“Dominant Motion”を把握することで,より音楽的でスムーズな和声解析を目指す.

15:20

15:55
ペンタクシス・システム概論-パーティコル軸
An Introduction to “Pentaxis System” for Tonal Recognition and “Partequal Axis” in the System
◎櫻井 健 (作曲・ピアノ・元ニュー・イングランド音楽院)
Ken Sakurai(Composer, Pianist, formerly New England Conservatory of Music)
”Pentaxis ”(ペンタクシス)とは空間軸と時間軸,そしてパ-ティコル軸をあわせた観念上における5つの軸,”penta-axis ”としての合成語である.そのシステムであるから,”五軸系”である.また,”パ-ティコル(partequal)”とはpartialとequalの合成語である,その軸であるから非平衡,平衡の軸,つまり”衡間(こうかん)軸”としてもよいだろう.我々は言語を使用し,そしてまた我々の(倍音列に関わる)聴覚機構は歴史的に遡りえる限りにおいて変化していない.これらの事実を踏まえ,人が陥ってしまう音楽上の調性における領域を以上の認識の原理によって捉えることは無益ではないと考える.本稿では作家ジェイムズ・ジョイスの造語,”カオスモス”と観念上遠からずの関係にある筈であるパーティコル軸の説明に重点におきながら具体例を掲げ,本システムの有り方を外縁から説明することに努めた.
15:55 終了