平成14年度春季研究発表会 第45回情報処理学会・音楽情報科学研究会 合同研究発表会プログラム

    • 日程:  平成 14 年 5 月 18 日(土)、19 日(日)
    • 場所:  図書館情報大学・メディアホール(情報メディアユニオン2階):  〒305-8550 つくば市春日 1-2
    • 連絡先: mus-joint@ulis.ac.jp

 

 

  • 発表は1件25分(質疑込み)です。
  • 18 日終了後、懇親会を行います。
  • 以下で著者名、タイトル等にリンクがあるのは、ホームページや email アドレスへのものです(掲載申請のあったものだけ)。

5月18日(土) 13:00-17:45

セッション1: 13:00 – 14:40 (4件)  司会: 松島俊明(東邦大)
1 GTTM に基づく音楽表現手法再考

平田圭二(NTT)、平賀譲(図書館情報大)
著者が提案している,GTTM と DOOD に基づく音楽表現手法に関して,その問題点を指摘し,検討を加え,改良法等を示す.
2 画像中の円の落下と音の変化の共鳴現象

難波精一郎、林勇気(宝塚造形芸術大)
CG制作において画像の動きと音の変化の同期の法則性および法則からの逸脱の許容範囲について知ることは有用である。 また共感覚現象の基礎研究としても興味あるところである。 今回はモニター画面上で円が落下する動画に周波数変化する音を重ね、 円のスタートから停止までの動きと音の変化の同期について判断を求めた。 その結果、円の動きの終結点と音の停止が同期している場合、 スタート点での円と音の同期がとれていなくても主観的には円の動きと音の変化が同期しているように知覚された。 この現象が円の落下条件に限られているか検討した。
3 GPを用いたメロディー作成の一手法

紙谷元喜、木村英志、阿江忠(広島大)
楽譜から曲における拍子、根音、メロディーといった曲構造の関連における特徴を記号系列として獲得し、 その系列を計算機にHMMを用いて学習させ、学習した特徴をもとに新たなメロディーをGPを用いることで自動的に作成する。
4 RWC研究用音楽データベース: 音楽ジャンルデータベースと楽器音データベース

後藤真孝(産総研/科技団さきがけ研究21/RWC音楽DBサブWG)、 橋口博樹(RWCP/RWC音楽DBサブWG)、 西村拓一(産総研/RWC音楽DBサブWG)、 
岡隆一(RWCP/RWC音楽DBサブWG)
音楽情報処理の研究分野のさらなる発展のために、研究者が自由に利用可能な音楽データベースとして、 音楽ジャンルデータベースと楽器音データベースを構築した。 その制作方針と全体構成を報告する。
セッション2: 15:00 – 16:15 (3件)  司会: 苧阪満里子(大阪外語大)
5 電気刺激フィードバック装置の開発と音楽パフォーマンスへの応用

長嶋洋一(SUAC)(email: nagasm@computer.org)、赤松正行(IAMAS)、照岡正樹(VPP)
8チャンネル電気刺激方式生体フィードバック装置”PiriPiri-3″をIAMASとの共同研究により開発した。 リアルタイムMIDI情報を受けて、生体に張り付けた電極により、 多種の電気刺激をシステムからのフィードバックとして与えることが可能である。 本発表では、そのコンセプトとシステムデザイン、多数の被験者を使っての評価実験、 音楽パフォーマンスへの応用などに関する研究報告の第一弾を行う。
6 脳波の反応測定に好ましい聴覚刺激の提示時間について

中村貴展、武田昌一(帝京平成大)、 吉田友敬(成安造形大)、 武田剛(帝京平成大)、 山本佐代子(お茶の水女子大)、 武者利光(脳機能研/帝京平成大)
本研究では、聴覚刺激に対する脳波の反応を調べてている。 先行して行った音高とテンポによる実験では音高が脳波に影響を与えることを示唆する結果が得られたが 十分な有為性は見られなかった。 時間に対する脳波の変動が主な原因と考えられる。 そこでわれわれは刺激を与えているとき、脳波がどの程度の時間安定しているのかを調べ、 最適な刺激提示時間を見出す実験を行った。 今回の実験では、変動係数による解析を行った。
7 調性的体制化が転調感に及ぼす影響

三戸勇気(日大)、寺田信一(防衛医大)、川上央、大蔵康義(日大)
先行研究の転調課題に対する認知活動の生理心理学的研究で、 8小節程度の曲に対する調判定、感情価、脳活動の3指標からの検討を行ってきた。 また、楽曲を和音課題と旋律課題の2パターンで行うことにより、 転調課題の楽曲ごとに生理心理的な違いが見られるのではないかと考えた。 そこで今回、転調前のメロディの調性への依存度が転調後の転調感を支配しているという仮説をもとに、 組み合わせの違いによって転調感に及ぼす影響を生理心理学的側面から調べた。
セッション3: 16:30 – 17:45 (3件)  司会: 下迫晴加(産総研)
8 調知覚の手がかり

松永理恵、阿部純一(北大)
松永・阿部(2000,2001)は,音高セット[C,D,E,G,A,B]が同じで音高の系列順序のみ異なる音列材料を60種用意し, 聞き手に調反応を求めることで,調の知覚が音高セットに規定されるだけではなく, 音高の系列順序にも系統だった形で影響されることを示した。 本研究では,松永・阿部と同一の音高セットを用い音高系列のみが異なる450種の音列材料を用意し, 絶対音感を持つ音楽熟達者に調名を求めることで, 特定の調の知覚が具体的にどのような手がかりによって導かれるのか, について検討する。
9 メロディの単純接触効果

生駒忍(筑波大)
前に聴取したメロディのほうがより高い印象評定を受けるという、単純接触効果を確認した。 一方で、接触の前後で評定値の上昇は認められず、飽和ないしは疲労のような効果も同時に生起している可能性が示された。
10 和音の楽譜の同定に対する先行和音の影響:予備実験の報告

大西潤一、吉富功修(広島大)
和声的に関連する和音を前もって処理することが,楽譜として提示される和音の処理を促進するかどうかを検討する。 本発表では予備実験の結果を報告する。
  • 研究会終了後: 音知学会総会
  • 18:30~: 懇親会(ビストロガクジ)

 

5月19日(日) 9:00-16:15

セッション4: 9:00 – 10:15 (3件)  司会: 安達真由美(北大)
11 ピアノ熟達者における主観評価と聴取者における客観評価との相関性について

米津幸絵(慶大)
楽器演奏上の演奏動作と演奏また演奏スキル獲得過程間に相関関係が認められる。 本研究ではピアノ演奏に焦点を当て、被験者練習過程・実際の評価とゴニオメータの演奏動作データとの相関性を解明する。 特に熟達者に見られる非言語知識とスキルの抽出を目指す。
12 ピアノ演奏における運動感の表現 - モーツァルトのピアノソナタK311による定量的研究

田口友康(甲南大)
音楽作品は演奏表現(解釈)によって異なる印象を与えることが知られている。 本研究は、演奏上の物理的な変量を制御することによってどのような演奏表現の表出が可能かという問題に対して、 表題のピアノ曲について主としてその運動感が得られるような変量(速度、音量、継切)の時間発展を 「合成による分析」によって検討する。
13 演奏における表情的逸脱(expressive deviation)とそのルールについて - グリーグのピアノ協奏曲第1楽章冒頭と第2主題のアゴーギクとディナーミク,およびその連動の分析を中心にして

山本祐子(愛知教育大)、田口友康(甲南大)、村尾忠廣(愛知教育大)
6人の著名なピアニストと山本裕子による演奏を解析し,アゴーギクとディナーミクに関してデータを収集した。 これらのデータが先行研究で明らかにされてきた「一般的な演奏ルール」とそれぞれどのように一致したり, しなかったりしたか,個別に比較分析した。 その上で,ルールに一致しなかったケースの理由を音楽の特異構造(idiosyncratic structure of music)との 関係から解釈を試みた。 アゴーギクとディナーミクの連動に関しては, 例外的に連動をしない対照を示す場所(フレーズの繋ぎ)が各演奏家に共通したことから, あらたな演奏ルールとして特定することにした。
セッション5: 10:30 – 11:45 (3件)  司会: 山田真司(大阪芸大)
14 音楽ビートと運動ビートのタイムラグについて -マーチングステップの熟達者と未経験者の相違について-

新山王政和、村尾忠廣(愛知教育大)、南曜子(金城学院大)、小川容子(鳥取大)
西洋式マーチングステップを身に付けた熟達者とそうでない人の歩き方を分析的な視点から比較した結果、 「拍点は動作の始まりなのか、終わりなのか」という視点が新たに浮上してきた。 その経緯と分析の結果について報告したい。
15 時間縮小錯覚におよぼす区切り音の強さの影響

柿葉美帆、中島祥好(九州芸工大)
時間縮小錯覚とは、短音で区切られた時間間隔Sの前に、それより短い時間間隔Pが隣接しているとき、 Sの長さが著しく過少評価される現象である。 本研究では、時間間隔を区切る刺激の性質を変化させたときに、錯覚の生じ方がどのように変化するかを検討する。
16 音系列における時間間隔の変化の検出

下迫晴加(産総研)、石田時敬、菊地正(筑波大)
連続する時間間隔が常に少しずつ変化する音系列を呈示し,時間間隔の変化検出を求める実験を行った. 変化検出時と直前の間隔との時間差は,最初に等間隔音系列を挿入する方がしない場合よりも短かったため, 最初のいくつかの時間間隔が変化検出の比較に重要と考えられる.徐々に間隔が長く,あるいは短くなる音系列よりも, 長短交互に変化して2間隔の長さが一定となる音系列の方が変化検出が困難であったことから, ビートが変化検出に影響を及ぼすと考えられる.
  
*** 昼休み ***
セッション6: 13:00 – 14:40 (4件)  司会: 水浪田鶴(阪大)
17 言語知識に基づく印象尺度の設計

太田公子、熊本忠彦(通信総研)
音楽演奏評価や楽曲検索,及び印象評価実験等で使用している印象尺度(形容詞対)は, 実験で用いる音素材に依存した形容詞であったり,過去の研究や実験で用いた形容詞であると言った 経験則に準ずる場合がほとんどである. そこで,まず;(1)幅広い層の人にアンケートをとり, 音楽場面で使う印象語を収集し,データベース化した. 次に,(2)印象語を幾つかのタイプに分類し,印象尺度としてふさわしい印象語を決定した. 最後に,(3)それらの印象語を用いて,言語知識に基づいた印象尺度の設計を行った. (1)のアンケートは Web 上で行ったため,幅広い層の自由記述回答が得られ, (2)に於いて様々なタイプに分類された. その中で,感情的性格及び感情反応に分類された印象語を(3)の印象尺度設計に用いた. 印象尺度の設計は,印象語間の同義語,反義語,類義語の関係からある条件に合う語をグループ化するという手法で行った. 手法の有効性を検証するための実験を行った結果, 従来,同タイプとして使用されてきた音楽作品の感情的性格と楽曲聴取に伴い生じる感情反応を表す印象語が,区別された.
18 発車サイン音楽のフィールド調査 - 山手線一周調査を例に -

小川容子(鳥取大)、山崎晃男(大阪樟蔭女子大)、桑野園子(阪大)
本論文は,駅で流されている発車サイン音楽が,電車利用者にどのような印象を与えているのかフィールド調査 及びイメージ調査によって明らかにしたものである。 被験者は18歳から60歳までの26名。 2つの調査でおこなった「形容詞を用いた印象評定」では,迫力性,美的,金属性の3因子が同様に抽出され, 中でも美的印象に関する共通性が認められた。
19 歌の聴取印象と再認記憶 - 言葉とメロディの関係を探る -

星野悦子(上野学園大)
歌は複数の属性を持っている。主たるものは言葉(詞)と音楽(メロディ)である。 この2つから歌の聴取における全体的印象が形成されるが、両者の関係はどのようなものであろうか。 形容詞尺度による測定から、歌の印象にはメロディの効果が詞よりも強く現れることが示された。 また、両者の印象に食違いのある歌は記憶されやすかった。
20 音楽による感情のコミュニケーション(2)- 未経験者の表出ルールと解釈ルール -

山崎晃男(大阪樟蔭女子大)
未経験者に打楽器を使った短い即興演奏によって数種類の基本的な感情を表出させた後、 その全演奏について別の被験者に表出意図の判断をおこなわせた。 両実験の結果から、表出ルールと解釈ルールについて検討する。
セッション7: 15:00 – 16:15 (3件)  司会: 小坂直敏(NTT)
21 声楽家の演奏スタイルと音場との時間的融合に関する研究

加藤浩介、安藤四一(神戸大)
演奏音楽に適したホール音場の調整方法およびホール音場に適した演奏・選曲方法を提案する。 音源の自己相関関数の減衰性状が最適初期反射音遅れ時間・最適残響時間に高い相関をもつことを元に, 音楽とホール音響が一体となった声楽演奏のあり方を定量的に考察する。
22 単旋律ギター演奏における,最適押弦位置決定システムの構築

三浦雅展、柳田益造(同大)
ギター演奏において,任意の音に対するの押弦位置は複数の可能性が存在するため, 任意の楽曲を演奏する場合その押弦位置は複数通り存在する. ここではギターの初心者のための,単旋律演奏を対象とした最適な押弦位置を決定するシステムの構築と その評価について述べている.
23 模擬育種法による作曲支援システムの試み - 多数パートへの拡張

畝見達夫、仙田学(創価大)
対話型進化計算法の一種である模擬育種法を応用し、 16パート16拍で構成される短い音楽フレーズを創作するシステムを作成した。 多数のパートを扱うために考案した部分育種の方法、 および、フレーズを組み合わせて曲に仕上げるための道具についてデモを交えながら紹介する。