平成21年度秋季研究発表会

日本音楽知覚認知学会・2009年秋季研究発表会プログラム詳細版
2009年 11月 7日(土)~ 11月 8日(日)
於: 龍谷大学  (世話役: 三浦 雅展 先生)
■ 講演時間:一般講演25分(発表20分+質疑応答3分+入れ替え2分)
■ ◎印は研究選奨受賞の有資格者を表す。
11月 7日(土)
11:30~13:00 理事会
13:00~13:05 開会あいさつ
セッション1 13:05~14:20
[1] 13:05~13:30 音楽演奏及び傾聴時の情動がヒトの自律神経活動に及ぼす影響 中原英博(森ノ宮医療大学・保健医療学部),古屋晋一(ミネソタ大学・神経科学部),木下 博(大阪大学大学院・医学系研究科) 音楽傾聴時の情動変化が自律神経活動に影響を及ぼすことは、先行研究によって明らかにされてい る.しかしながら、音楽演奏時の情動変化がいかなる生理応答を引き起こすかは検討されていない.本研究では、ピアノ演奏時及び同ピアノ曲傾聴時の情動変化 に伴う自律神経活動の変化の差を、心拍変動スペクトル解析法から検討した.
[2] 13:30~13:55 日常的な話しかけと歌いかけの文脈における乳児の発声の特徴:事例研究 安達真由美,安藤太一(北海道大学) 自発的ソングの発達では、音楽的相互行為という文脈の方が他の日常的な文脈 よりも、乳児は音楽的喃語を発すると言われている.本研究は、この知見が、果たして物理的に観察可能な現象なのか、それとも、乳児の音声特徴を聴いた人の 解釈によるものなのかについて、検討することを目的としている.実験1では、家庭における19ヶ月男児の発声を1週間に1度3週間に渡って録音したものか ら、乳児の喃語を50取り出した.母親が話しかけている文脈から取り出した喃語と母親が歌いかけている文脈から取り出した喃語における音声的な特徴を比較 した.その結果、乳児の音声そのものの特徴は、文脈間で差が見られなかった.実験2では、同じ50の喃語を母親と女子大学生に提示し、「どちらかというと 歌っているように聴こえるか」「どちらかというと話しているように聴こえるか」を判断させた.その結果、母親も女子学生も、「歌のような喃語」と「話し声 のような喃語」を区別することができた.聴取者は、それぞれの喃語がどの文脈で発せられたか知らなかったにも関わらず、前者は「歌いかけ文脈」に、また後 者は「話しかけ> 文脈」により多く見られた.これらの結果から、「音楽的喃語が音楽的相互行為の文脈でよく見られる」という現象が、物理的な特徴に基づくものではなく、聴 き手の解釈によるものであることが示唆された.さらにこの現象は、音楽的喃語を聴き慣れた研究者にのみ観察可能なものではなく、一般の母親や乳幼児に接触 する機会の少ない女子学生にも観察されることが明らかになった.言語的喃語と音楽的喃語を区別することが、女性に独自の能力なのか、あるいは男性にも見ら れるのかについては、今後の検討課題である.
[3] 13:55~14:20 ピアノ基礎テクニックの定量化-新しいフィンガーエクササイズ作成のために- ◎藤原一子(名古屋大学大学院・教育発達科学研究科),布目寛幸,池上康男(名古屋大学) 新しいフィンガーエクササイズを作成するために、ピアノ基礎テクニックの定量化を試みた.「先行音から後続音への進行」「最短音」「指間幅と指使い」を分析項目として、『ブルクミュラー25の練習曲(初級)』『ブルクミュラー18の練習曲(中級)』の分析を行った
14:20~14:35 休憩
セッション2 14:35~15:50
[4] 14:35~15:00 連続タッピング条件下でテンポキープをするための運動制御戦略 ◎従野貴博,橘亮輔,力丸裕(同志社大学大学院 生命医科学研究科) 連続的な指タッピングでテンポをキープするときの運動軌跡を解析することで、テンポをキープする 運動制御戦略を解明することを目的とした.指の引き上げ最大角度からタップに触れるまでの速度はテンポに依存せず、また、指の引き上げ最大角度とタップの 安定性には相関が見られなかった.
[5] 15:00~15:25 熟達化に伴うフレンチホルン演奏の表情筋活動変化 ◎平野剛(大阪大学大学院・医学系研究科) ,吉江路子,工藤和俊,大築立志(東京大学大学院・総合文化研究科),木下博(大阪大学大学院・医学系研究科) 金管楽器演奏時の唇や唇周辺の動態を知ることは、安定したパフォーマンスを獲得するために重要である.そこで本研究ではフレンチホルン演奏時にアンブシュアを構成する筋の筋活動を測定し、上級者群とアマチュア群の筋活動変化量の差異を検討した.
[6] 15:25~15:50 マンドリントレモロ演奏の不均一性を考慮した模擬音の合成 ◎安井 希子(龍谷大学大学院・理工学研究科),三浦 雅展(龍谷大学・理工学部) 本研究では,マンドリン演奏におけるトレモロ音の不均一性について調査し,それを考慮した模擬音の合成を行なっている.具体的には,高速度カメラで撮影した映像と録音した音響データから不均一性を調査している.
15:50~16:05 休憩
セッション3 16:05~17:20
[7] 16:05~16:30 トロンボーンの和音練習におけるレベルバランス感養成のための吹奏レベルの自動指示 ◎宮本正規,柳田益造(同志社大学大学院・工学研究科) トロンボーンの和音練習において,各奏者に吹奏レベルの増減指示を行う手法を提案している.提案手法による指示と人間による指示について符号検定を行ったところ,両者の間に有意な差が見られなかったことから,提案手法の有効性が確認された
[8] 16:30~16:55 手腕部の表面筋電位を用いたドラム演奏方略の調査 ◎藤沢 卓矢(龍谷大学大学院・理工学研究科), 三浦 雅展(龍谷大学・理工学部) ドラム演奏において適切なタイミング及び適切な強度で演奏を行なうには,適切なドラムスティック 制御が必要であり,ドラム奏者は現在の演奏よりも先の演奏を考慮して演奏を行なっていると考えられる.本稿ではそのような考慮を「ドラム演奏方略」とし, ドラム演奏方略の特徴について調査している.
[9] 16:55~17:20 スネアドラム演奏における基本感情の表現に関する調査 ◎佐藤 博将(龍谷大学・理工学部), 藤沢 卓矢(龍谷大学大学院・理工学研究科), 三浦 雅展(龍谷大学・理工学部), 三戸 勇気(日本大学・芸術学部),  川上 央(日本大学・芸術学部) 本研究では,優しさ,喜び,悲しみ,恐れ,怒り,無表情の計6種類の感情を意図させたスネアドラム演奏における演奏動作をモーションキャプチャシステムを用いて計測し,得られた演奏動作データから演奏動作と感情表現の関係を調査している.
17:20~17:30 表彰式(予定)
18:00~20:00 懇親会 RECレストラン(龍谷大学キャンパス内)(予定)
11月 8日(日)
セッション4 9:00~10:15
[10] 9:00~9:25 大学生におけるカラオケの心理的及び社会的効果 松本じゅん子(長野県看護大学・看護学部),渡邊愛実(聖隷三方原病院),青木志織(名古屋大学医学部附属病院) カラオケによる主観的な気分変化及び積極的に歌わない場合の効果について調べた.その結果,カラオケにより心地よい疲労感が感じられるが,積極的に歌わない場合,気分への効果よりも社会的効果として機能していることが示唆された.
[11] 9:25~9:50 音楽聴取における主観的感情喚起とセルフモニタリングとの関係 ◎石川亮太郎(東京芸術大学大学院・音楽研究科) 本研究はセルフモニタリング傾向と音楽聴取における主観的感情喚起の程度との関係を検討した.結果,セルフモニタリングは音楽聴取における主観的感情の程度に正の影響を与えることが示された.
[12] 9:50~10:15 聴力、音楽聴取時の快適音量、聴取した音楽の好みと日常の音楽聴取行動、音楽練習時間との関係について:音楽大学の学生を対象として 中野朋子,廣川恵理(名古屋音楽大学・音楽学部) 音楽大学生14名の最小可聴音量を計測し、被験者の音楽練習時間、携帯オーディオ機器の使用時間をアンケートで答えてもらい、3種類の音楽に対する好み、これらの音楽を聴いたときの快適と思われる音量との関係を調査した.
10:15~10:30 休憩
セッション5 10:30~12:05
[13] 10:30~10:55 噪音におけるSMARC効果 ◎生駒忍(筑波大学・人間総合科学研究科),橋本望(筑波大学・人間学類),菊地正(筑波大学・人間総合科学研究科) 高い音には右で,低い音には左で反応するほうがより反応時間が短いことが知られている(SMARC効果).本研究ではシンバル音を用いて,音高が明瞭でない噪音においてもSMARC効果が得られることを示した.
[14] 10:55~11:20 ピアノ打鍵の同音反復学習について―鍵盤楽器練習用補助器具の活用― 高瀬瑛子,松本金矢,八木規夫(三重大学・教育学部), 森下修次(新潟大学・教育学部) 同音反復学習を目的に、鍵盤楽器練習用補助器具を活用した場合の利点を調査するため、被験者10名による実験を行った.MIDIデータと動作分析の個々の結果から、指導前と指導後で、殆どの被験者のある程度、改善がみられた.
[15] 11:20~11:45 音の時間構造がリズム知覚に及ぼす影響 ◎蓮尾絵美(九州大学大学院・芸術工学府),中島祥好(九州大学大学院・芸術工学研究院) わたしたちがリズムを知覚する際に基礎となるのは、音の始まりの知覚であるといわれている.本発表では、音の時間構造がリズム知覚に及ぼす影響を調べた実験を紹介し、 音の知覚的な始まりだけでは知覚されるリズムを説明することができないことを示す.
[16] 11:45~12:10 馴染みのない音階の受容:音階スキーマの普遍的特性の探求 松永理恵(日本学術振興会・北海道教育大学),阿部純一(北海道大学大学院文学研究科) 人間にとって習得しやすい音階はどのような特徴をもつのであろうか.諸文化の音楽の音階に共通する普遍的特徴の一つとして、完全4度と完全5度の音程が指摘されてきた.本研究では、新奇な音階の認知における完全4度と完全5度の役割を調べた.
12:10~13:00 休憩
セッション6
[17] 13:00~13:25 ハーモニーの逸脱を反映するERP成分ERANの検討 ◎橋本翠,宮谷真人(広島大学大学院・教育学研究科) ハーモニーの逸脱を反映するとされるERP成分の指標としてERANが報告されている.そのERANがハーモニーに特有のものであるのか,およびハーモニーの逸脱に対して他のERP成分が生じるかどうかについて検討をおこなう.
[18] 13:25~13:50 楽譜記憶過程に影響を及ぼす要因について 小堀 聡(龍谷大学理工学部) 被験者が楽譜の記憶と楽器の演奏を繰り返す過程において,演奏を記録するとともにアイカメラで眼球運動を測定し,演奏データと視線データの変化を分析することにより,楽譜記憶過程に影響を及ぼす要因について検討した.
[19] 13:50~14:15 ピアノによる短二度音程におけるsensory consonanceの測定  Ⅱ ◎山本由紀子 (総合研究大学院大学 文化科学研究科 ) ,仁科 エミ,大西 仁(放送大学) 前回行った実験の結果、音高が高い組み合わせの方が協和感が高く感じられると判断された.その結果を踏まえ、異なる音源モジュールでも同様の結果が得られるか、また、音楽の専門的知識や一定以上の音楽経験が関係するかを明らかにするため、再度実験を行った.
[20] 14:15~14:40 オーケストラ聴取におけるコンサートピッチの支配的な周波数帯域 太田公子 オーケストラ聴取におけるコンサートピッチ抽出において,Plomp&Leveltの協和モデルを導入した.オリジナル楽器(古楽器)とモダン楽器編成によって協和点がずれることによりピッチが異なることが示唆された.