2008年度春季研究発表会 プログラム(詳細版)

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日本音楽知覚認知学会 2008年度春季研究発表会 プログラム
  2008年 5月 24日(土), 25日(日)
  於: 上野学園大学(世話役: 星野悦子)
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■ 講演:30分(発表20分+質疑応答8分+入れ替え2分)
■ ○印は発表者,◎印は研究選奨受賞の有資格者を表す.
※理事会: 5月25日(日)12:00 ~
 5月 23日(金)
17:00 ~ 19:00 2:00 世話役: 安達真由美(北海道大学),平賀譲(筑波大学)他 第2回日本音楽知覚認知学会ミニ英語合宿 場所: 上野学園大学講義室(詳細後日)
費用: 無料
 5月 24日(土) ※受付開始・開場時間 12:15 ~
セッション1 13:15 ~ 14:15 座長:平賀譲(筑波大学
[1] 13:15 ~ 13:45 0:30 ○長嶋洋一(静岡文化芸術大学大学院・デザイン研究科) 「マルチメディア心理学実験のためのプラットフォームについて」 視 覚的・聴覚的・運動的など複数のチャンネルのリアルタイム情報処理に関して、時間的精度とレイテンシのばらつきを重視する必要のあるマルチメディア心理学 実験システムに適したプラットフォームについて検討した。特に、最近のパソコン/関連機器のグラフィック処理機能に依存した実験デザインの危険性について 考察した。
[2] 13:45 ~ 14:15 0:30 ○丸山亮司(個人) 「同期周期法による和音,和音進行,音階の評価方法」 楽曲和音安定度るさ)は和音構成音周期から同期周期算出することにより評価することができる。また、和音進行安定度るさ)は、前後和音構成音周期から同期周期算出することにより評価することができる。さらに、楽曲使用されるモード(音階旋律)の安定度るさ)はモードを構成する音階構成音周期から同期周期算出することにより評価することができる。同期周期は「安定るい)」との、同期周期は「不安定い)」との印象える。楽曲和音和音進行、モードの安定度るさ)を定量的評価する「同期周期」による楽曲評価方法紹介する。
休憩 14:15 ~ 14:30 0:15
シンポジウム企画 「日本音楽知覚認知学会の20年~音楽知覚認知研究のこれまでとこれから~」
前半 14:30 ~ 15:40 司会:仁平義明(東北大学
14:30 ~ 14:40 0:10 星野悦子(上野学園大学) 「趣旨説明」 1988年に音楽知覚認知研究会が設立され(1994年には学会へ発展)、20年が経過した。 本シンポジウムでは、これまでの20年間で各音楽研究分野ではどこまでの知見が蓄積され、今後どのような展開を見せていくと思われるのかについて4分野の研究者に語っていただき、会としての将来展望も一緒に考える機会としたい。
I 14:40 ~ 15:10 0:30 難波精一郎(大阪大学名誉教授) 「音楽知覚・認知研究の流れー音響心理学・音楽音響領域より」 音 楽知覚・認知研究は音楽学、音響学、音楽教育学、心理学、情報科学など学際領域の相互交流により音楽研究の進歩と理解を目指す。音響心理学とりわけ聴覚の 精神物理学的研究は心理学の古典でもあり基礎的領域である。音を素材とする音楽において音の物理的性質と音感覚の関係について多くの知見が蓄積されてき た。また認知心理学はコンピュータの発達を背景に情報科学と密接な関連を保ちつつ新しい展開をみせた。この展開と合わせ音楽音響学では作曲理論や演奏表現 にいたる広い領域で情報処理技術の支援を受けて新たな音楽の分野を開拓しつつある。この現状と今後の期待について展望する。
II 15:10 ~ 15:40 0:30 大串健吾(京都市立芸術大学名誉教授) 「演奏領域の研究」 音楽の知覚と認知に関する分野で、演奏の実験的研究がどのように行われているかについて、簡単に述べた。
休憩 15:40 ~ 15:55 0:15
後半 15:55 ~ 17:25 司会:仁平義明(東北大学
III 15:55 ~ 16:25 0:30 大浦容子(新潟大学・教育学部) 「音楽認知の発達」 これまでの20年間の音楽認知発達分野での研究の中で取り上げられた興味深いテーマや、新しい研究法の開発・工夫に伴って発展した新たな分野・テーマのいくつかを紹介した。
IV 16:25 ~ 16:55 0:30 村尾忠廣(愛知教育大学) 「音楽心理学から心理音楽学,そして認知音楽学へ」 音楽心理学は音響心理学ではなく, 音楽の心理学であるはずである。しかし, 音楽心理学は音楽というより, 音楽の構成要素である音高,音長, 音色, 和音などの知覚についての研究に偏りがちであった。音楽の心理学というからにはさまざまなレベルでの様式感覚や特定の音楽作品の特異構造の認知を扱う必要がある。この様式や特異構造は音楽学の研究分野であったから, 音楽学と一体となった「心理音楽学psychomusicology 」が提唱されることになる。「心理音楽学」はやがて「認知音楽学 cognitive musicology」と呼ばれるようになるが, その実情はどうであろうか。本論では筆者自身の研究の一端をふり返りながら認知音楽学のレビューに代えたい。
16:55 ~ 17:25 0:30 指定討論者:山田真司(金沢工業大学) 「ディスカッション」
17:25 ~ 18:00 0:35 片付け&移動
18:00 ~ 20:00 2:00 懇親会
 5月 25日(日) ※受付開始・開場時間 8:30 ~
セッション2 9:15 ~ 10:15 座長:荒川恵子(京都女子大学
[3] 9:15 ~ 9:45 0:30 ◎本吉達郎,川上浩司,塩瀬隆之,片井修(京都大学大学院・情報学研究科) 「音楽的解釈を表現する比喩的表現の生成過程に関する数理的考察」 本 研究では,比喩的表現を介して楽器奏法や演奏表現を伝達する過程を表す数理的枠組の構築を目指し,伝達者が比喩的表現を導き出す過程の数理的枠組を提案し た.これまで,比喩的表現を用いた音楽的解釈の伝達過程を対象として,この事例収集を行い,意味構造の分析を行ってきた.比喩的表現の持つ意味構造は,伝 達者が想定していると考えられる内的表象と対応させることができ,選択される意味構造のバリエーションが,解釈や用いられる「たとえ」の多様性につながる ことがわかってきた.そこで,伝達者の想定する内的表象から意味構造を導き出す過程を内的表象を表現する分類域からその共通構造を導き出す演算過程と解釈 し,比喩的表現の生成過程をチャネル理論における商分類域を求める過程で表現する方法について議論した.また,伝達者の内的表象に対して,形式概念分析を 用い,比喩的表現選択の指針とする方法についても議論を加えた.
[4] 9:45 ~ 10:15 0:30 ◎佐々木真吾(北海道教育大学大学院・教育学研究科札幌岩見沢校),吉野巌(北海道教育大学・札幌校) 「楽器練習場面における方略教授およびメタ認知的教授の効果」 練習方略教授および、メタ認知的思考促進楽器演奏改善ぼす影響検討するために、中学生管楽器初心者対象に、具体的練習方略教授する「方略教授(S)」、プランニングやモニタリングをす「メタ認知的教授(M)」、その両者う「方略+メタ認知的教授(SM)」、の3練習内容質的検討した。その結果練習曲完成度にはあまりきないはめられなかったが、Mにおいて自発的練習組織化するなど、効率的練習っている様子れた。また、自発的方略使用には、練習中のメタ認知的活動不可欠である示唆された。
休憩 10:15 ~ 10:30 0:15
セッション3 10:30 ~ 12:00 座長:藤沢望(長崎県立大学
[5] 10:30 ~ 11:00 0:30 ◎生駒忍(筑波大学大学院・人間総合科学研究科),橋本望,大久保勇也(筑波大学・人間学類) 「水平次元における音高の自発的定位」 本 研究では,音高と空間的な水平次元との内的な対応関係について,反応時間を指標とした検討を行った。34 名の実験参加者に,高音または低音を提示し音高判断を求めた。その結果,高音に右のキー・低音に左のキーで反応させた場合(適合条件)のほうが,その逆の 組み合わせ(不適合条件)よりも反応時間が短いことが示された。これは,ピアノの鍵盤のように高い音ほど右側へと自発的に定位される傾向があることを示し ている。また,その効果は鍵盤楽器の専門教育経験の有無にかかかわらず同様に得られ,そういった楽器経験に由来する効果ではないことが示唆された。
[6] 11:00 ~ 11:30 0:30 ◎大澤智恵(新潟大学大学院・現代社会文化研究科),大浦容子(新潟大学・教育学部),宮崎謙一(新潟大学・人文学部) 「音楽的音高の発声反応と音名反応」 絶 対音感および相対音感に含まれる,音高を判断し特定する能力と特定の音高をつくり出す能力とがどのような関係にあるかについて,探索的な実験を行なった。 音楽専攻の大学生および大学院生が実験に参加し,聴こえた音の音高名を答える課題と,指定された音高を歌う課題が行なわれた。音名を答える能力と特定の音 高を歌う能力との間には弱い正の相関があった。このことから,絶対音感あるいは相対音感は,聴こえた音の高さを特定することと特定の音高をつくり出すこと の双方向に役割を果たしていることが示唆された。
[7] 11:30 ~ 12:00 0:30 ◎田中里弥(京都市立芸術大学大学院・音楽研究科),津崎実(京都市立芸術大学・音楽学部),饗庭絵里子(京都市立芸術大学大学院・音楽研究科),加藤宏明(ATR認知情報科学研究所/NICT) 「共振周波数遷移の開始点と終了点の時間的ずれに対する聴覚感度比較」 音 の流れの中にある個々の音の生起は大した困難もなく知覚され得るが,その境界を音響的に定義するのは実は難しい。本研究は,新規音イベントの生起を「マー ク」するための効率的な手掛かりとしてどのような音響的特徴が機能するのかを調査するものである。特に周波数軸上で音が急速に遷移する場合,遷移の開始点 と終了点ではどちらの点で新しい音の生起が知覚されるのだろうか。この問いに答えるため,共振周波数を変調させた周波数グライドの開始点のみ,または終了 点のみが等時性を持つような実験刺激を設計し,その等時性からの逸脱に対する感度を比較した。実験の結果,逸脱は開始点条件においてより検出されやすかっ た。このことは,新規音イベントを「マーク」する手掛かりとして周波数遷移の開始点の方が終了点よりも効率的に機能することを示唆する。
12:00 ~ 13:20 1:20 昼食休憩(理事会)
総会・研究選奨表彰式 13:20 ~ 14:00 0:40 司会:仁平義明(東北大学)
セッション4 14:00 ~ 15:00 座長:岩宮眞一郎(九州大学
[8] 14:00 ~ 14:30 0:30 ○尾花充(宝塚造形芸術大学・造形学部),石井莉乃(宝塚造形芸術大学大学院・造形研究科),三浦雅展(龍谷大学理・工学部),柳田益造(同志社大学・理工学部) 「メロディーの輪郭タイプに対する印象評定実験」 「メ ロディーの輪郭」に関する研究として,以前筆者らは、メロディーの輪郭を5種類に分類し,各類型の特徴に関する評価実験を行い,「覚えやすい」「くどい」 「期待感を抱かせる」「盛り上がる」「だらだらした」などといった印象をある程度表現することができる分類を提案している.しかし前回の実験では、既存の 有名曲を原曲のまま刺激として使用したことにより,一部の被験者がすでにその曲を知っていたことや,歌唱表現といった,「メロディーの輪郭」以外の要素が 認知に影響する可能性を見逃していた.今回はその欠陥を改めるために,類型を特徴づけるメロディーを新たに作り,それを刺激として評価実験を行った結果を 述べている.
[9] 14:30 ~ 15:00 0:30 ○出口幸子(近畿大学・工学部),三家本祥平(近畿大学大学院・システム工学研究科),小迫隆大,黒瀬能聿(近畿大学・工学部) 「日本ポピュラー音楽の3作曲家の旋律分析と楽曲分類」 筆 者らは日本ポピュラー音楽の3作曲家の特徴量を抽出し,NN法を用いて楽曲を分類した.まず,(a)5音旋律,(b)音階における音,(c)音階における 音程,および(d)音階における3音旋律に関して,各作曲家の特徴量を抽出した.次に,抽出した特徴量を用いて,幾つかの特徴空間で楽曲を分類した.前記 (a)~(d)の各々について,各作曲家の特徴量を軸とする3次元特徴空間を用いて分類した結果,(c)が最も有効であることが分かった.また,(a)~ (d)の内の3つを組合せ,各作曲家の特徴量を軸とする9次元特徴空間を用いて分類した結果,(a)(b)(d)の組合せが最も有効であることが分かっ た.さらに,4名の作曲家から3名を選び,作曲家の組合せについて検討した結果,作曲家の組によって分類精度が変わることが確認できた.最後に,本研究で 検討した特徴空間を利用して,楽曲を推薦するシステムを試作した.